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紺色のひと

思考整理とか表現とか環境について、自分のために考える。サイドバー「このブログについて」をご参照ください

男!ふんどし!『ケイメイ寮祭 THE FINAL』のすべて

生活 私小説 写真

ケイメイ寮祭 THE FINAL
僕が大学生活を送った寮には、ふんどしになって夜の街を練り歩き、最後には公園の堀に飛び込む――という実に「大学男子寮のステレオタイプ」な寮祭がある。諸事情により今年で45年の歴史に幕を閉じることになった寮祭を淡々とレポートするよ。

『世の中には二種類の男子寮がある。「きれいな男子寮」と「残念な男子寮」だ――』

僕は自分の暮らした寮についてこう書いた。もちろん僕が居たのは残念なほうの男子寮で、汚かったり、苦しかったり、暗かったり、説明しようとするととても3つでは足りないくらいのKが付く。きれいなほうの男子寮の代表格たるイケメンパラダイス的な空間が実在するのか、僕は知らない。まぁ、それはともかく。
僕は同じ寮生だった友人から、「今年で寮祭が最後になる」との報せを受け取った。詳しい事情はわからなかったけれど、ともかく僕は仕事を休み、東北へ飛んだ。そう、魂を置き去りにしてきた、山形のあの町を目指して。



以下、控えめに申しまして大変男臭いというか、むさ苦しいというか、お見苦しいというか、そういう写真が多発します。具体的には男性の下半身が古き良き下着一枚に包まれた状態となっております。
苦手な方は、お気をつけください。








僕が懐かしきケイメイ寮の扉を明けると、既に異様な雰囲気が漂っていた。……神棚だ。中のお札の手書き感がすごい。ちなみに「初孫」は酒田市の東北銘醸で作られている日本酒で、山形県内ではよく飲まれている。庄内地方ではこれと加藤喜八郎酒造「大山」がメジャーどころである。
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食堂では、もう紅白餅の準備が出来ていた。寮祭は町内の商店や居酒屋等からスポンサーを募り、神輿でお店を回って商売繁盛を祈願する――という流れで成り立っている。餅はスポンサーの皆様に配る、大切なものだ。
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懐かしい顔。そう、僕以外にも、遠方からはるばるとこのために駆けつけたOBが居るのだ。在寮生よりも気合が入っているのは当然というか、オリジナルふんどし持参だよこのひとたちはまったく……。え、僕? マイふん持ってったけど?
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寮内放送がかかり、わらわらとふんどし姿の寮生が食堂に集まって来た。まだ表情に照れが見える。
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一部、スネ毛を処理している者がいて、指摘されて恥ずかしそうにするなど。我ながら、それ以外は誰得の写真。
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今年度の寮祭実行委員長からありがたい訓示をいただき、無理やりテンションを上げる参加者一同。今年の寮祭参加者は、在寮生40人中20名強、なぜかOBが10名弱。
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刮目して見よ! これが寮生に担がれ夜の街へと繰り出す、ありがたいお神輿である。材料は、裏の林から切り出してきたモウソウチクと、ホームセンターで買ってきたあれこれである。
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ところで、どうでもいい情報と言えばどうでもいいんですが、今日の天候は雨です。日没時の気温は10.1℃、よかったね、雨が降ってたせいであったかいよ!
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ええい! 雨だろうがなんだろうが構わん! ついて来い! とばかりに出発! なぜか一番槍にOBの姿が見える。
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「さみー!」「さみーよ!」と皆が口にする中、果敢なる声が。「ケーメイ!」それに応えて続く声は「リョーサイ!
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「神輿だ!」「わっしょい!」「祭りだ!」「わっしょい!」すれ違った女子高生がドン引きしてるが、そんなのは知ったことではない。
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「悩まないで 突き進め」実にいい言葉だ。
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まずは大学を目指し、雨天前進!
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ここで一端神輿を置いて、一升瓶と枡、餅、飲めないひと用のウーロン茶などを持ち、大学構内へ。寮生の所属する研究室や、お世話になっている先生方に強襲もとい挨拶参りへ。
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声を出せッ!
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構内へ侵入。普通に服を着ているひととすれ違うと「なんでこいつら服着てんだろう、寒いのに」という気分になるから不思議だ。
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先は長い、どんどんどんどんどんどんどんどん行きましょうねー。「あ、なに撮ってんですか!」なんで嬉しそうなんだよ。
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寮生が所属する研究室に着くと、担当教授や研究室の方に廊下においで願い、口上を述べて、学業発展イッキをさせていただきますッ!
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そして万歳三唱。本寮では、酒を強く勧めたり、無理やり飲ませたりする伝統がほとんどなく、下戸に近い僕も平和に過ごすことができた。
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教官からおひねりを頂戴し、ありがたさのあまり五体投地ばりの土下座で感謝の意を表する寮生の図。
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それにしても君たちは嬉しそうにチラチラするね。
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研究室に突入したら、女子学生も交えてコンパの真っ最中だった。当然のように入り込み、当然のように乾杯して、嵐のように去ってゆく。
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図書館へ。近所の高校に通うJKが勉強中だったが、興奮した男どもにお茶やジュースを勧められ、ドン引きどころか正視できない状況。当然だ。あまりに申し訳ないことをしたので、嵐の後、状況説明と「寮のお祭りがあってね…こういうことはもうないと思うから、懲りずにまた勉強しに来てね」とフォローを入れておく(ふんどし姿で)。
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(うどん170円とかきあげ30円でてんぷらうどんにして毎日食べていた)食堂前でひと息ついて、
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いざ! 夜の街へ!!
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雨は止まない。声も止まない。
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さすがに寒く、神輿をかついでいない連中は腕組みをしながら行進する。
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スーツ姿の彼は、ナビゲータ&交通整理人員。スポンサー様をきちんと回れるように、事前に道順を決めて神輿は進む。というか、そうしないと警察から道路占有許可が降りない。記憶と歴史認識が正しければ、スーツ人員を寮祭に最初に投入したのは僕が寮祭実行委員長だった回で、「寒くてふんどしは嫌だけど寮祭には参加したい」という友人に役割を担ってもらったのが始まりのはずだ。もちろん、昔にもいたのかもしれないけれど。
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寮生の胃袋、寮の食堂に野菜を卸してくださっている八百屋さんにご挨拶。”学業発展”イッキに代わり、”商売繁盛”イッキを。万歳三唱をして、差し入れに庄内柿などを頂戴する。
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通りがかりの学習塾から女子中高生が覗いているのに気付き、にわかにテンションが上がるものども。
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公園に向かうのはまだ先だ、雨降る夜道をただ進むのだ。
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ヘッドライトに照らされて浮かび上がる太ももが眩しい。
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街路樹のイチョウも散り始めている。言うまでもないけれど、11月の東北の夜は本来、ふんどしで耐えられる気温ではない。
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これはわいせつ画像ではありません。
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この仕草で別のなにかを想像したひとは手を上げるように。
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素晴らしい雄叫びの肖像だ。
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スポンサーになってくださったお店が既に営業時間外だった、なんてこともある。聞こえるくらい万歳三唱!
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「アビィ・ロード」的な写真を撮ろうとして見事に失敗しました。
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馴染みの食堂に突撃し、お酒を振舞う。僕がさんざんお世話になった食堂は今はこの町にない。マクドナルドも出来てるし、靴を脱いで入るカラオケは潰れてしまったし、もう僕にとってのあの町はどこにもないのかも知れない。
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既に法被には水が染みているはずだけれど、声を張り上げる寮生たちよ。
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それこそが現在であり、未来であるはずなのだ。
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信号とヘッドライトで浮かび上がる背中に背負った文字の重さ、というものがあるかもしれない。
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町の博物館であり、いくつもの文化財を保管してある致道博物館の横を通り抜け――



夜になってもなお明かりの消えない市役所の脇を通り抜け――(お仕事おつかれさまです!)
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町の安全を守ってくださっている消防署の横を通り抜け――
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向かうは飲み屋が並ぶ銀座通りと昭和通り!
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騒ぎを聞きつけて外に出てきたお店の方にもお酒を振舞ったりする。
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とにかく万歳を!
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僕が学生の頃にアルバイトをしていた店にもお礼参りをする。カリスマ小僧だった僕を気に入ってくれた常連さんがたまたま来ていて、懐かしさに胸が熱くなる。
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いよいよ、スポンサーさん回りも終焉を迎えつつある。
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寮を出発して、既に4時間以上が経過している。寒さのせいなのか、飲みすぎのせいなのか、なんだか辛そうな男も。ちなみにこの頃、僕の膝は寒さで痛み、曲がらなくなっていた。リューマチか。
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締めはいよいよだ! 皆のもの、我に続けよ!
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お堀の周りに集いつつあるふんどしに、ハクチョウさんも驚いて逃げ出す。
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点呼を取って、集合写真を撮ったら、さぁ、さぁ、さぁ、さぁ、さぁ!
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ダ イ ブ だ !
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悲鳴と歓声が混じる。
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大変セクシーな装いになりつつも、歯を鳴らしながら堀から這い上がる。そりゃ、そうだ。この後僕も痛む足を引きずって堀から這い出たが、泥の中に雪駄を忘れてきた。
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あとは寮まで走れ!
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さんざん担がれ、既に原型を留めていない神輿に、実行委員長が点火する。お焚き上げのような儀式である。
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※宗教的儀式ではありません
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まさか11月に花火を見ることになるとは思わなかった。
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ご覧ください、彼らのこの、何かをやり遂げた表情を。
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花火の光の具合とか、なにか高校生の青春、夏の思い出のひとコマ的な写真に仕上がってしまいましたが、ご覧の通り半裸で濡れた男どもしか写っていません。
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猛獣。
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玄関先の人造池、通称ユモトープにまで飛び込む始末。コイやナマズは無事だろうか。
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火遊びの後は、消火活動に勤しむ。
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多分、寒さとか、どうでもよくなっている。
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この後、共同風呂に全員で入るという恒例行事もあるのだが、カメラが曇ってしまったとか、その他の色々な理由で皆様に写真をお見せできないのが残念でならない。
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こうして「第45回ケイメイ寮祭 THE FINAL」のメインイベントである神輿パレードは華々しく終焉を迎えたのだった。
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僕がこの寮に入る前から、先達はきっと同じようにこれを繰り返してきた。ある意味では馬鹿馬鹿しい、この行事を毎年のように続けてきた。ふんどしになる連中を冷めた目で見ていた寮生もたくさんいただろう。けれど、僕はそうしなかった。
生活の場であり、日常の舞台そのものでありながらも、あまりに「物語の舞台」然としていたこの寮に暮らしていた僕は、いつからか自分が、自分の私小説の登場人物そのものであるかのように錯覚していた。浴衣を着て雪駄を履き、カメラと手帖を風呂敷に入れて、真面目に大学に通った。そして生活の一部として、そして物語のイベントとして寮祭に参加したようにさえ思う。
卒業して幾年、何度かこの寮を訪れてみたけれど、当時の生活感を思い出すことができず、毎度毎度、ただ懐かしさがこみ上げてくるばかりだった。寮祭にOBとして参加してみても、どこかよそよそしさが残った。それでも、僕は遺さずにはいられない。あちこちで感じる僕のあの暮らしを、写真や文章で遺さずにはいられない。あの土地や建物に染み付いた記憶は、多分どこかで潰えてしまうのだ。誰かが覚えていたとしても、僕は遺さずにはいられない。
それでも、きっと。
あの町のあの公園のお堀には、僕が暮らした三年分の記憶が、僕が飛び込んだ三回分の雪駄と一緒に泥に沈んでいる。


寮での生活について綴った連作私小説「モーニングスター」はこちら
近日中に、寮内部の風景を記録したエントリを投下予定です。

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