紺色のひと

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おーちゃんクッキーのひみつ

祖母がつくるクッキーはおいしい。とてもおいしい。厚地で硬めでぱりっと食べ応えがあり、甘すぎずにクルミが香る。従弟たちも「ばあちゃんのクッキーは食べだすと止まらない」「やっぱりこれが一番」と口を揃える。レシピは娘である僕の母にも受け継がれているけれど、あんなにおいしいものを自分で作れないのも勿体無いので、直接習ってきた。


娘マチ子を連れて、祖父母のところによく遊びにゆく。僕にとってはばあちゃんだが、マチ子にとってはひいばあちゃんなわけで、マチ子のばあちゃんであるところの僕の母との差別化を図ったのか、ばあちゃんは「マチ子ちゃんには『おーちゃん』って呼んでもらおうかねえ」と言った。女学生時代のあだ名だったという。そんなこんなで僕と妻はマチ子の前でばあちゃんのことを「おーちゃん」と呼ぶようになり、マチ子も「おーちゃん、あいたいよー」とごく自然に口にするようになった。
そんな祖母のクッキーなので、おーちゃんクッキーと名づけることにする。


ちなみに、祖母のレシピメモには「サブレ」と書いてあった。


『おーちゃんクッキー』レシピ

材料(一回分)

  • 粉(薄力粉):200g
  • さとう(上白糖):80g
  • バター:100g
  • 卵の黄身:2個分
  • くるみ:適量
  • ベーキングパウダー:小さじ1/3
  • バニラエッセンス:2〜3ふり位

1. ボウルにバターを入れ、泡立て器でクリーム状になるまで練る。

バターは室温で柔らかくしておく。



2. 上白糖を入れ良くすり混ぜ、白っぽくなってきたら卵の黄身を入れ、良く混ぜ合わせる。バニラエッセンスを入れる。

祖母は「うちの(バニラエッセンス)は古くなっちゃったから」と4〜5振り入れていた。「新しいのなら2〜3回でいいんじゃないかねえ」



3. 良く振るった粉を入れ、さっくりと混ぜ合わせる。
 
「あんまりグチャグチャに混ぜすぎるんじゃないよ、木べらで縦に切るようにね」



4. のし板の上に生地を出し、数回軽くこねてから刻んだくるみを入れる。棒で伸ばし、5mmくらいの厚さにする。
「くるみは多いほうがおいしいね、生地は厚めだから結構食べ応えがあるんだよ」
 



5. 型を抜き、天板に並べる。
 
「今日みたいに暑い日は生地が柔らかくなっちゃうから、冷蔵庫で少し寝かせてからにしたほうがいいねえ」
クッキー型は僕が子供の頃から使われているもので、かなり大きい(iPhoneとの比較)。僕は鳥さんのが好きだ。
「レシピだと『照りを出すため卵の黄身と同量の水、ひとつまみのさとう、小さじ1/2の醤油をぬる』って書いてあるけど?」「ああ、やらなくてもいいんだよ」「そっかー」



6. オーブンで焼く。160℃、18〜22分程度。
「オーブンの説明書を見て、クッキーを焼くときの設定でやればいいよ。表面がちょっと茶色くなるくらいがいいからね」




7. 荒熱をとって完成!
 



僕は焼きたてより、冷めてちょっと硬くなったくらいのほうが好きだ。焼きたてはバターが少しきつめ。
ジップロックとかタッパーに入れて冷蔵庫にしまっとけば日持ちするからね、悪くなるまえに全部食べちゃうけどね」




思い出とかレシピの放流とかの雑記

思い出は特にない

この「おーちゃんクッキー」、特段強い思い出があるわけではないのだった。母はよくケーキを焼いてくれたけれど、そういえばクッキーはあまり頻度が高くなくて、僕にとってのクッキーはこれが当たり前だったので、思い出に残るものとして意識したことがなかったのだ。
例によって妻と結婚して、妻が僕の実家や祖父母の家に顔を出すようになって、僕が昔から食べていたものを「これはおいしい!」「すごくおいしいです!」とひとつひとつ感心したように言うので、僕はそれまで「そういうものだ」と思っていたものを、改めて「確かにおいしいよなこれ」と再認識するのだった。おーちゃんクッキーもそのひとつだ。母の料理もそうだし、祖母のカレーもそうだと思う。
ともあれ、結婚して5年以上過ぎた今も、「これって普通じゃないの?」と思うことは結構たくさんあって、そのたびに面白いなあとか、このひとと結婚してよかったなあと感じるのだった。


レシピの放流

ともあれ、僕が慣れ親しんできた味なのは間違いない。僕はお菓子作りをほとんどやらないけれど、このおーちゃんクッキーを会得したことで、唯一の武器である「アンちゃんケーキ」――母から習った、ガトーショコラふうのチョコレートケーキだ――に加えて、強力なラインナップとなった。いや、ほんとにおいしいんですって。
アンちゃんケーキのレシピはこちらのエントリにまとめてあるが、このケーキも喫茶店めぐりが趣味だった妻をして「あの森彦*1のケーキよりおいしいから行く理由がなくなってしまった」とまで言わしめたもので、そういうものに慣れ親しんでいたことを幸せだったと思うかはともかく、僕はそれを「WEBにしまっておく」選択をした。僕だけじゃなくて、どこかのおうちで定番になったら嬉しいなと思うからだ*2
ちなみに、祖母はこのレシピを「ずっと昔に本か何かで読んで、テレビだったかねえ、作ってみたらおいしかったからそれからこればっかり」なんだそうだ。

元ネタ

アンちゃんケーキのひみつ−紺色のひとでも書いたが、この記事のタイトルには元ネタがある。大石まさる「りんちゃんクッキーのひみつ」というマンガで、もっと言えばこのマンガのタイトルの元ネタは、椎名誠らの「あやしい探検隊」料理人であった林政明さん(リンさん)の「林さんチャーハンの秘密」という本だ。

林さんチャーハンの秘密 (角川文庫)

林さんチャーハンの秘密 (角川文庫)




まあ、そんなことより、クッキーをめしあがれ。

*1:札幌市中央区円山にある喫茶店。コーヒーがおいしく、雰囲気もとても良い

*2:ちょうど先頃まで連載されていたニンジャスレイヤーのエピソード「ニチョーム・ウォー……ビギニング」は、クローンヤクザが広まりつつある中でリアルヤクザのミーミーを守ろうとする人々の動きも一部で描かれていたが、そのことをちょっと思い出したりしなかったりした。多分クッキーとは関係ないのでごあんしんだ。