読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

紺色のひと

思考整理とか表現とか環境について、自分のために考える。サイドバー「このブログについて」をご参照ください

大人のための対子供格闘術【タタカイ】講座〜野外編〜

環境

僕は週末に、親子を対象にした野外活動・自然観察会イベントのボランティアスタッフをしていて、幼稚園から小学校低学年くらいの子供たちと外で遊ぶ機会が多い。彼らにとって「力いっぱい遊んでくれる、無茶の利くお兄さんキャラ」というのは貴重らしく、周りに集まってくるのを見るのは僕にとってもいちいち嬉しい。
さて、お子さんをお持ちの、あるいは親戚や近しい方に子供がいらっしゃる方ならよくご存知だと思うけれど、小さい子供は本当によく動く。どんだけエネルギーが蓄えられているんだとこちらが不思議になるくらい動く。女の子がませた素振りを見せて手を繋いできたり質問をマシンガンのように浴びせてきたりするのに対し、男の子は「タタカイ」が好きで、暇さえあれば体当たりやぼっこ(棒のこと・エゾの方言)でこちらに攻撃をしてくる。で、いつも僕はそれの相手をしているのだけれど、妙にそれがご好評頂けているようで、なぜかと思って保護者の方に聞いてみたら「扱いがとてもお上手」という言葉を頂いた。弟や従弟たちが多くて年下には慣れているけれど、未就学児童の扱いに長けているという自負はなくて、さらに考えてみてたどり着いた結論は、「僕もタタカイが好きだったから」である、というものだった。
この「昔あるいは今もタタカイが好き」なので、「相手がなにを求めているか手に取るように分かる」という感覚を誰かに伝えるのはけっこう困難なのだけれど、今回言語化・ノウハウ化を目標として書き表してみることにした。
ということで、『大人のための対子供格闘術【タタカイ】講座〜野外編〜』開幕である。

【はじめに】タタカイの定義

当エントリに頻出する「タタカイ」とは、子供の徒手空拳による格闘、および木などの棒を使ったチャンバラを示すものとする。こう書くと大げさだけれど、子供がお父さんに体当たりや手を振り回してぶつかってゆくアレを想像してもらえればいい。
また、ここでの「子供」「彼ら」とは「タタカイ」が好きな年頃、すなわち幼稚園から小学校低学年までの児童として話を進める。想定している相手は男の子が多いけれど、女の子もよくタタカイに混じってくる。

【先にまとめ】長くなるので要点を箇条書きに

書いてみたら思いのほか長くなったので、先に要点のみを箇条書きにしてみた。

タタカイに往くにあたって
  • 「彼らと互角、あるいは彼らに立ちはだかる強者」である自分を演出する
  • 「分かりやすい強さ」を意識する
強さの演出のためには
  • かっこいい流派の名前をつける
  • かっこいい構えを考える
攻撃の技法としては
  • かっこいい技を叫びながら繰り出す
  • くすぐりが有効
守りの技法としては
  • 手数を多くして攻撃をすべて受けきる
  • 我慢したりいなしたりする
その他の演出として
  • パロディを多用する(ワンピースがお勧め)
  • わかりやすい「本気モード」を設定する
なにより安全のために
  • 地面の状態に気を配る
  • 常に周囲に注意し、背後を取られないように
  • 可能な限り、倒れるところまでコントロールして見届ける
  • 熱くさせすぎないために逃げるのも有効


それでは改めて、『大人のための対子供格闘術【タタカイ】講座〜野外編〜』本編である。

それでは心構えから

彼らは心のどこかで「自分は強い、あるいは強くなれるはずだ」という思いを抱いているようだ。世のお父さん方がそれの発散にどの程度尽力されているかは僕には分からない。かの父小説、椎名誠の「岳物語」にも同様の描写がある。多分大多数の子供たちはその「強さへの欲求」を忘れたり見切りをつけたりするけれど、未だにそれをしつこく考えている僕みたいな中二病患者もいて、今回はその症例を最大限利用して書いてゆく。
さて、彼らを相手にするにあたって心がけておくこと、それは「彼らと互角、あるいは彼らに立ちはだかる強者」である自分を演出すること、かつ「安全を最優先すること」。僕は一時的にとはいえ他人のお子さんを預かる立場なので、特に後者には気を使っているつもりだ。
さて、この強者の演出のためには、

  • 強そうに見える
  • 動きが速い
  • 力が強い
  • うたれ強い

など、「分かりやすい強さを積極的に表現すること」が一番の近道だ。以下の項目では、攻撃や防御について、分かりやすい強さの表現と、その注意事項について触れてみる。

「強そうに見える」ために

強そうに見えるためには、強そうに見せればよい。これは単純な話で、体を大きく見せるとか、なんらかの技法や武術に秀でている演出をして、子供が強そうだと思うようにすればいい、ということ。
僕はと言えば、自分がとある流派の拳法の使い手であるという設定をつくることでそれを解決している。
彼らの前では、僕は山形県発祥の「金星流拳法*1」の使い手であり、僕に対抗するには彼らも自分の隠された力を出さなければならない、と思わせるようにする。
さて、流派があるのだからそれ相応の構えが必要である。これがわが流派、金星流拳法のかっこいいタタカイの基本構え、「明星構え」である。

「なんかの拳法っぽい感じ」を意識しつつも「なんで手がキツネ?」というツッコミどころをご用意致しました。
そして、攻撃の意思表示をする際の「黄昏構え」がこれ。

夕暮れ時の不審者 威嚇表現として、モンゴル相撲の鷹の舞、その他荒ぶったりするポーズをイメージ。野生のカモすら恐れて逃げ出す迫力である(下写真参照)。

さらに、防御姿勢を顕わにするときの構えがこれ。

「彼誰構え」、通称「アサ子地蔵の構え」である。防御なのに一番不安定じゃん、というのもツッコミどころとしてご用意致しました。やられっぱなしの時間(下写真参照)を作ると、「仏の顔も三度までだぞ」とどこかで聞いたセリフに繋げられるので重宝する。

あくまで「わかりやすく」「かっこいい」。や、格好よくないのは分かっているのだけれど、それっぽいのでいいのである。というか自分が気に入っているのでいいのである。そこのところの美意識は人格形成に深く切り込む必要があるので、ここでは省略する。
その他強さの演出として僕が多用しているのは「手刀で道端の草(ハンゴンソウやオオヨモギ等)を切る」ことなど。

攻撃の技法

さて、分かりやすい流派とその構えが決まったら、次に意識すべきは「かっこいい技の名前」である。もちろん、繰り出すときには大きな声で叫ばなければならない。
その前に、児童に対する攻撃について、思うところを述べる。子供を相手にするのだから、当然こちらは手加減をしなければいけないのだけれど、思いのほか小さな力で痛がったり、遠くへ吹っ飛んでしまったりするので、僕は次のことを特に意識している。

  • 基本的に拳や足を用いた打撃(いわゆるパンチ・キック)は使わない
  • こちらから先制はせず、攻撃を加えてきた相手に反撃する「ハムラビシステム」を採用
  • 攻撃には後述する数種と、いなし・かわしを多用する

で、具体的にどういった攻撃を加えるかというと、僕は主たる手段として「くすぐり」を用いている。長時間ではなく、すれ違いざまに相手の脇に手をするりと差し込んで1.2回五指でつまんでやるようなやつ。痛くないこと、大抵の子供に効果があって、のけぞったり悲鳴を上げるので重宝している。もちろん技にはわかりやすい名前をつけ、叫んでいる。「アサでんりゅう!」と。
「アサでんりゅう」は効果と名称の整合(くすぐったい:痺れる)が取れていること、ポケモンの台頭による「電撃」「電流」という言葉の普及により幼稚園児にも分かることから優れた名称だと個人的には思っている。さらに、彼らにこちらの技の名前を覚えてもらえば、それに対抗すべく彼らも工夫するので一層盛り上がる。この「覚えてもらう」ことはタタカイの中でコミュニケーションを取るのにとても重要だ。「くそーあいつのあの技強いなー」と思ってもらえれば、ひとつの共通認識が生まれ、そこから話や行動が派生する。だからこそ技や構えはわかりやすくなければならないし、数もあまり多くないほうがいい。多彩な技キャラは封印する。
さて、もうひとつの攻撃手法は「投げ」である。
投げと言っても一本背負いみたいなものではなくて、両手で抱き上げて一回転させてから地面に降ろすようなもの(アサタイフーン)を多用する。払腰や大外刈のような倒す投げ技は、地面の状態によって大変危険なので避ける。
また三半規管の未発達によるものか歩行経験の薄さから来るものなのか、子供はすぐ目を回すし、自分の重心を崩されることに慣れていない。ぐるりと体を回すだけでふらふらになって倒れるし、いきなり重心を外してやると同様に倒れるので十分に注意する。

守りの技法

子供たちが多用する攻撃は、とても攻撃と呼べるものではなくて、体当たりや組み付き、それにグルグルパンチ(参考画像)のようなものだ。
それに対するこちらの守りとして最も有効なのは、ひとつひとつに反応して防御すること、次点が我慢することだと考えている。
皆さんは幼少期にチャンバラのご経験はおありだろうか。子供のチャンバラは、相手の体ではなく、相手の獲物を狙って攻撃を繰り出すものなのだ。剣と剣がぶつかり合うことそのものが彼らにとってのタタカイなのだ。創作バトルものの武器戦で武器同士のぶつかり合う描写が多いこともそのひとつの証拠だと思うのだけれど、ともかく、子供は自分の攻撃に相手が反応し、防御することでタタカイをしている気分になっていると僕は思っている。
つまり、相手の乱打にはこちらも全て受けで応酬する。連続むちゃくちゃパンチみたいなのが来た日には、こちらも体の前で手を大げさに(フンフンディフェンスのように)動かして受ける。僕に向かってくる子供たちは、僕の右手の狐さんがあたかも八岐になったか、あるいは僕が千手観音になったかと驚愕し、さらなる攻撃やチームプレイを模索する。
「我慢」については言葉の通りで、彼らの渾身の攻撃がこちらに全く通用しない、ということを表現するためのものだ。その他体当たりに対しては攻防一体のいなし技、アサトルネードなどを使用し、相手の人数・年齢等で対処する。人数が多く、年齢が低いと組み付かれる可能性が上がるので、彼らの上に倒れないよう注意する(後述する)。

その他の演出

ここまで述べてきたように、タタカイの相手には「わかりやすい強さ」が求められる。これを手っ取り早く演出する手法として、以下が挙げられる。

パロディを多用する

子供に分かる強いものと言えば、子供向け番組やアニメの主人公である。仮面ライダーシリーズや戦隊モノは移り変わりが激しく、カバーし切れない(し見てない子は見てない)ので、子供にも大人気のワンピースからネタを拝借させて頂くことが多い。「アサアサの銃乱射(ガトリング)!!」
女の子向けの鉄板はやっぱりプリキュアだが、こちらの不勉強で知識が追いつかず、目下精進中である。「はじけるヘドロの香り!」くらいしか。

「本気を出す」演出

アニメ等でもなんでか定型化している「本気」。おれの120%の前では消し炭、ということを分かりやすく伝えるために、セリフや身につけているもので演出する。
具体的には、「お前らなど右手一本で充分」と言っておいて、「ついに封印していたこの左腕を使う時が来たか…(ゴゴゴゴ…)」と左を振りかざしてみせるとか、おもむろに手ぬぐいを被るとか、上着を一枚脱ぐとか、リストバンドをはずすとか(もちろんこれを言うために付けておく)。
言っていて恥ずかしくなるときもあるのだけれど、彼らはなり切りがやっぱり好きなようで、こっちが敵キャラ然とするとちゃんと主人公然としたセリフを返してくれる。
敵と言ってもさすがに三段変身とかはできないのでやらないが、「本気」が目に見える形で(実力を伴って)表れるとよい。「本気」後、実際に動きをいきなり速くしたりするのがいいと思う。
それにしても、王道とされる少年マンガって忠実にこの技法を守っていて感心する(だからこそ王道なのかもしれないけど)。火事場のクソ力やセブンセンシズは、超サイヤ人とかギア・セカンドとかと比べるとむしろ「わかりにくい」のかも知れない。
また「本気」に併せて使いたいのが「奥義」。前述の技の名前しかり、かっこいい奥義とアクションを考えよう。僕の奥義? 金星流は「よーし、さっそく最後の手段だ」くらいの気持ちで奥義を使うので、ここでお披露目するのはとてもとても。

安全のために

大人が子供と一緒に遊ぶ上で、怪我をさせることはあってはならない(ましてや僕は預かる側だ)し、怪我してしまうことも可能な限り避けたいと思っている。ここでは、野外でタタカイをする際に注意すべき点について述べる。
野外ではタタカイの舞台が広いことが多い。室内でありがちな「机の角に頭をぶつける」等のことが少ない代わりに、地面が凶器になることが多い。具体的には石や木の根がそうなので、芝生や草原、砂浜があれば、そこに誘導するとクッションとして使えるため、かなり安心できる。
また、一対多の状況がとても多いので、自分の振り回した手が当たってしまったり、正面から突撃してきた相手をいなしたら後ろから来た子と正面衝突してしまった…なんてことも往々にしてある。このため、常に八方に視線を遣って、できるだけ背後を取られないようにする。囲まれたときにはいなしを使わず、自分の周りに子供を集めて誰も倒れないようにしたほうが安全なこともある。
前述の「投げ」では、レイアップシュートよろしく「手を添えて地面に置いてくる」ように、「いなし」を用いる際にもなるべく相手の体から手を離さず、地面に無難に転がすところまで誘導してやるのがよい。
また、足元に組み付かれるとこちらも倒れざるを得ないので、その時は自分の下敷きにしないよう、早めに自分から倒れ、仰向けの姿勢で「のしかかられる」。メガネっ子はあらかじめ外しておくか、倒れるときにさっと外して目立つところに放り投げ、被害を避けるのが吉。
また、お父様方は、彼らの頭部がこちらの金的に当たる可能性があるので、足を開いた状態で正面から彼らの体当たりを受けないほうがよい。
最後に、「熱くさせすぎない」ことも重要である。終わりが設定されていない遊び方なので、一度彼らのスイッチが入ってしまうと、泣くか親御さんに止められるか(止まらないことも多い)、何らかのきっかけがない限り、泣き叫びながら向かってくることが多々ある(参考画像)。それを避けるため、定期的に脱兎の如く逃げて距離を取り、ほとぼりが冷めるのを待つとか、こちらが疲れて降参したことを示して「完全休憩・休戦」を提示するとかの配慮を。


しつこいようだが最後にもう一度まとめ

最後に、もう一度要点を箇条書きにしておく。

タタカイに往くにあたって
  • 「彼らと互角、あるいは彼らに立ちはだかる強者」である自分を演出する
  • 「分かりやすい強さ」を意識する
強さの演出のためには
  • かっこいい流派の名前をつける
  • かっこいい構えを考える
攻撃の技法としては
  • かっこいい技を叫びながら繰り出す
  • くすぐりが有効、あと投げも
守りの技法としては
  • 手数を多くして攻撃をすべて受けきる
  • 我慢したりいなしたりする
その他の演出として
  • パロディを多用する(ワンピースがお勧め)
  • わかりやすい「本気モード」を設定する
なにより安全のために
  • 地面の状態に気を配る
  • 常に周囲に注意し、背後を取られないように
  • 可能な限り、倒れるところまでコントロールして見届ける
  • 熱くさせすぎないために逃げるのも有効

さあ、以上が、僕の持っているタタカイの技術、「対子供を想定した格闘術」だ。
彼らがいつまで僕を「おにいさん」として扱ってくれるかはわからない。いつ「オジサン」にクラスチェンジするのか、冷や冷やしているのも事実だ。ただ、彼らにとっての大人である以上、大人が楽しく遊ぶ姿を見せていたいし、そして力と技を併せ持つ頼れる男でありたい。鼓舞するような力ではなくて、小さい彼ら特有の、「自分の力を思い切りぶつけることができる相手」を体現するような力を持つ、強い存在でありたい。
もっと強くなりたいのだ。もし、上記の僕のタタカイ術に助言や苦言があったら、教えてください。お願いします。
最後になりましたが、ここまで読んでくださって、ありがとうございました。あなたとあなたのお子様に、身近な子供たちに、そしてまだ見ぬ未来の子供たちに、たしかな明星が輝きますように。
金星流拳法師範代 アサイ

*1:山形県西部で突如発生した謎の拳法。川に棲む男が発祥したと言われる他、一切が謎に包まれている…らしい

広告