紺色のひと

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妹ができました、もとい。

じめて妹が欲しいと思ったのはいつ頃のことだっただろう。弟たちや従弟ども、三人兄弟の幼馴染たちの中で育った僕は、家庭に母親以外の女性がいる、ということについて現実的に考えることができず、家庭の外では女性にどう接していいのかわからないままとにかく優しくしようと考えていた・・・・・・ような気がする。ともかく、中学生か高校生か、それくらいの頃から、僕は妹が欲しいと思い続けてきたのだった。とはいえ両親に話したところで既に歳の差は15歳、僕に残された道は妹が産まれるや否や亜高速で動き続けて15年のウラシマ効果を期待することくらいだった。例によってないものねだりだとわかっていた。僕は諦めていたのだ。






、こういう長い前置きを続けていても仕方がないので本題のことを書くと、今日、僕に妹ができた。もとい、恋人の妹が僕の義理の妹になった。もといもとい、結婚しました



るべく、今日の日を普段どおりに生活しようと思っていたのだ。恋人はこの日に向けて少しずつ覚悟を決めてきていて、今まで使っていた苗字が変わること、それまでの名前が消えてなくなること、本籍が変わることなんかを挙げて、心理状態にどういう変化があるんだろう、なんて僕に話して聞かせてくれた。
僕はと言えば、前日になって「独身最後の夜をどう過ごすべきか、やはりここはススキノへ、いいやもう、なんもしないで」などと開き直り、「のび太の結婚前夜」を本屋で買ってきて読んでいた。恋人はその夜、職場の飲み会で酔っ払って帰って来て、そのまま居間で寝てしまった。僕はせめてもの抵抗とばかりに、一緒には寝るまい最後の夜だし淋しく!とキャンプ用のマットレスを引っ張り出して彼女の傍に敷き、その上で寝た。我ながら馬鹿馬鹿しい結婚前夜だった。



姻届を休日受付の窓口に持ってゆくと、ご年配の日直さんがふたり椅子に座っていた。僕が提出した書類を受け取り、淡々と処理をして、「はいおめでとうございます」と僕たちに言った。区役所を出て、天気がいいね、なんて言いながら、近くの低いブロック塀にカメラを置いて一緒に写真を撮り、「はじめましてアサイさん、これからよろしく」と握手をした。




閑話休題

新しいダイニングテーブルが届いたときも、今までのアパートを引き払ったときも、届けを提出したときも、ビデオカメラを買ったときも、あのときもこのときも、彼女は本当に嬉しそうな顔をして僕を見ていた。僕は幸せな気分になった。彼女を、きっと優しく見つめ返していられたと思う。そして、これからもそういう気分でいられるということを、自分が疑いもしていないことに気づいた。
そうだ、覚悟はとっくにできていたのだ。このひとと生きてゆくことを、僕は既に決めていたのだった。それがいつからなのか、それとも徐々にだったのか、今となってはあやふやになってしまっているけれど、この一週間のカウントダウンで心がざわつかなかったことが、そのひとつの証拠になっているように思う。
身分も変わるし、戸籍も変わる。だからと言って気分一新、というわけではない。僕はこのひとと一緒にいることで、自分とこのひととの確かな未来を、生活を、生を想像することができたし、それを形にするために行動することもできた。不安はないのだ。今日を境に心を切り替えることなく、このままやってゆけるのだと思う。それは根拠に満ちた自信だし、自信に溢れた根拠だ。


今の気分について、たくさん引用したいフレーズや曲があるけれど、いつものように、これを引用して、今日の更新を終わろうと思う。読んでくれて、ありがとうございました。

あたらしい門のとびらがひらかれます。不可能を可能にすることもできます。
あたらしい日がはじまるのです。
そして、もし人がそれに反対するのでなければ、どんなことでもおこりうるのです。
ムーミンパパの思い出 (ムーミン童話全集 3)