紺色のひと

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大阪の錯誤捕獲クマについての簡単なまとめ(追記あり)

2014年6月、大阪府ツキノワグマが捕獲されました。イノシシ・シカ用の罠にかかったもので、こうした「錯誤捕獲」による動物は、原則として放獣するよう環境省から指針が出ています。しかし、大阪府ではツキノワグマが生息していないと思われており、捕獲時の対応マニュアル等が整備されていなかったこともあって、捕獲されたまま長らく処分が保留されており、動物愛護方面の関心を引くニュースとなりました。このたびこのクマが、熊森協会によって引き取られ飼育される――とのニュースが出たので、これまでの発表などをまとめておきます。


写真はクマと関係ないうちの猫です。「お前は何を言っているんだ」の顔。多分。


報道と行政発表から

平成26年 6月19日

ツキノワグマの捕獲について−大阪府報道発表

6月19日(木曜日)午前9時頃、豊能町野間口においてツキノワグマが有害鳥獣捕獲用の檻に捕獲されました。
現在、ツキノワグマは檻の中に収容されており、人身に危害を加える恐れはありません。

対象とした動物(ここではシカ・イノシシ)以外が捕獲される例で、いわゆる「錯誤捕獲」。


大阪府で初?のクマ捕獲 豊能町の山中、他府県から繁殖目的で移動か−産経WEST

19日午前9時ごろ、大阪府豊能町野間口の山中で、仕掛けられていたイノシシ捕獲用の檻(おり)にツキノワグマ1頭がかかっているのを、府猟友会豊能支部の会員が発見し、同町に通報した。
 人間に危害を加える恐れがあることから、駆けつけた府動物愛護畜産課の獣医師が麻酔で眠らせ、檻の中に収容。府は今後の取り扱いを検討している。
 府内にツキノワグマは生息しないとされていたが、近年は年に数件の目撃情報が寄せられていた。同課の担当者は「6〜7月はクマの繁殖期。生息している他府県から繁殖目的で移動してきた可能性がある」としている。

6月24日

くまモンも心配だモン! 行くあてなし大阪のツキノワグマ 自然放獣、動物園への譲渡…全て不調−産経WEST

 大阪府豊能町の山中で捕獲された野生のツキノワグマの行方に大阪府が頭を悩ませている。当初、生息実態がある府県で放つことを検討したが、「放獣(ほうじゅう)先は捕獲地が基本」などと指摘を受けて断念。全国100カ所近くの動物園やクマ牧場に受け入れを求めたが、施設に余裕がないなどとして、すべて断られた。果たしてツキノワグマはどこへ行くのだろうか−。

 ツキノワグマが捕獲されたおりは、豊能町に有害鳥獣として指定されたイノシシとシカの駆除を目的としたもの。ほかの生物がおりにかかった場合は「誤捕獲」となる。環境省によると、誤捕獲された生物は鳥獣保護法に基づき、自然に戻されるのが基本という。
 ここで問題となったのが放獣先だ。大阪はツキノワグマの非生息地帯とされている。動物愛護畜産課の担当者は「生息実績のない府内では生きていけないだろう」などとして、府内で放すのは不可能と判断した。
 次に考えられたのは、ツキノワグマが生息し、放獣のノウハウも持つ京都、兵庫両府県だった。しかし、大阪府京都府に対応策を尋ねたところ、「基本的に放獣先は捕獲された市町村」との説明を受け、兵庫県からも同様の理由で「受け入れは困難」と伝えられたため、他府県という選択肢もなくなった。
 放獣に代わり浮上したのは、動物園やクマ牧場への引き渡し。府は全国約100施設に保護を打診した。しかし、「施設のキャパシティーに余裕がない」「(保護されたツキノワグマは)野生動物のため、病気を持っていないか心配だ」などの理由で、すべて拒否されたという。
 ツキノワグマは現在、豊能町内の施設で保護されている。けがもなく、健康状態は捕獲時と変わりない。府は今後も放獣や保護の受け入れ先を探すが、「すべての可能性が絶たれた場合は、殺処分の可能性も」としている。
 近畿大学先端技術総合研究所の宮下実教授(野生動物医学)は「理想はツキノワグマの生息地での放獣。野生動物に県境はなく、各府県が広域的な課題として議論すべきだ」としている。

7月10日

府内初捕獲のツキノワグマ マニュアル作成迫られる−大阪日日新聞

大阪府豊能町で6月19日に捕獲したツキノワグマの対応をめぐり、府は、7月末までに受け入れ先を確保できなければ殺処分する方向で検討に入った。府はこれまでに全国の動物園やクマ牧場など約100カ所に受け入れを打診したが、飼育環境が整っていないことなどを理由に拒まれたため。ツキノワグマの捕獲は府内で初めてなだけに、府側は対応に頭を悩ませつつ、マニュアルの作成を迫られている。
大阪府の動物愛護畜産課は「7月末までをめどに受け入れ先を決めたい」とし、期限までに決まらなければ専門家と供にクマの扱いを検討するという。

9月4日

大阪府ツキノワグマ出没対応方針の策定について

 これまで大阪府域にはツキノワグマは生息していないと考えられてきましたが、平成26年5月以降、北摂地域において数件のツキノワグマの目撃情報があり、足跡の確認や大阪府域で初めての捕獲といった事案が発生しました。
 また、近隣府県ではツキノワグマの生息域の拡大が指摘されており、今後、住民の生活や自然公園等の利用に大きな支障となることが懸念されています。
 そこで、大阪府は、住民や自然公園等の利用者の安全確保を最優先するということを基本に、『出没を予防すること』及び『人身被害を防止すること』、『誤捕獲を防止すること』を目的として、ツキノワグマの出没への備えと対策を取りまとめた「大阪府ツキノワグマ出没対応方針」を策定しましたので、お知らせします。

大阪府、「初めての(?)」捕獲を受け、今後に対応すべく出没対応方針を策定。


9月10日

平成26年(2014年)9月10日 大阪府知事記者会見内容

大阪府知事、記者会見で「捕獲されたツキノワグマの受け入れについて」の項目について対応する。


豊能町で誤捕獲されたツキノワグマについて(よくあるご意見Q&A)−大阪府
府民の関心を惹いたニュースだったようで、専用の回答ページができたようだ。

Q3 誤捕獲されたクマを府内で放獣しないのですか?
A3
 大阪府はクマの生息域ではなく、集落が山に隣接し、自然公園や自然歩道も多い、人の活動が活発な地域であるため、人とクマが遭遇する危険性等を考慮して、豊能町と協議の上、放獣しないと判断しました。 


Q7 大阪府ツキノワグマ出没対応方針では、誤捕獲した場合の放獣について地元合意を得られた場合という条件をつけています。
   これは鳥獣保護法に基づく環境省の指針に違反しているのではないですか?
A7
 クマを原則放獣とする考え方は、クマの生息域における放獣体制の整備について示した、環境省の「鳥獣の保護を図るための事業を実施するための基本的な指針」に則ったものでありますが、大阪府域はクマの一時的出没地であり、生息域ではありませんので、その内容が適用されるものではありません。
 そのため、当該方針を作成するにあたっては、住民と自然公園等の利用者の安全確保の観点から、放獣については地域の合意を得るという条件を付しているものです。

10月31日

■豊能町のクマ 引き取り先決まる−MBSニュース

今年6月、大阪府豊能町の山中で誤ってイノシシの檻にかかったツキノワグマが施設で飼育されることになりました。
府は山に返すことは人里に近いため危険だとして動物園などの施設に引き取りを求めましたがすべて断られ殺処分も検討されましたが、自然保護団体大阪府内に新たに施設を設けて飼育することが決まりました。
「本当は山に帰すべき。熊にとってオリで飼うのはストレスかかるからかわいそうだが、精いっぱい大事にしたい」(日本熊森協会会長・森山まり子さん)
大阪府は「引き取ってもらってありがたい、安全な施設となるよう協力する」としています。 (10/31 19:17)

大阪府で初捕獲 クマ引き取り NHK NEWS WEB関西※動画つき

ことし6月、大阪府内で初めて捕獲されたツキノワグマは、兵庫県にある自然保護などに取り組む財団法人に引き取られることになりました。
ことし6月、大阪・豊能町の山林でオスのツキノワグマがいのしし用のわなにかかり、府内ではじめて捕獲されました。
その後クマは、町内の施設に置かれたおりの中で一時的に保護され、府が全国の動物園など100か所あまりに引き取ることができないか相談しましたが、すべて断られました。
こうした中、兵庫県西宮市の財団法人で自然保護などに取り組む、「日本熊森協会」が今月下旬になって引き取りを申し出たということです。
協会では今後、府内に専用の施設を設けて、クマを飼育する計画で、生態を理解してもらうため一般への公開も検討しているということです。
協会の森山まり子会長は、「野生のクマは自然にかえすのがベストだが、現状では難しく、次善の策として、今よりも良い環境で飼育するため引き取ることにした」と話しています。
一方、府の環境農林水産部は、「引き取っていただき非常にありがたい。今後安全な施設が設けられるよう協会に協力したい」と話しています。

報道および大阪府からの発表は以上。


日本熊森協会の発表と対応

熊森協会では、6月からこの件に対して積極的に意見を表明してきました。ブログ記事にて20件以上、かなり注目していたことと言えそうです。
全部読むのは大変心労を伴うので(読みましたよ、読みましたとも!)、ざっくりまとめてみました。

熊森協会の反応まとめ

あくまで協会の公式ブログから読み取れることです。「彼らが何々と言った」ということはともかく、「誰が何と言った」というのは協会ブログの書き手のフィルタを通した状態であって、あまり信頼のおけるものではないと僕は感じます。なので、あくまで、「こういうことがあったようだ」くらいにとどめておいてください。
こういう抜粋をするとき、悪意に満ちたものにならないように、極力熊森協会さんの文言をそのまま使うようにしているのだけど、それでもこうなってしまうのです。

ブログで大阪府の対応を批判

一時飼育されている施設を視察、飼育環境が劣悪で改善するよう求める

殺処分決定
大阪府「もらい手を捜したけれど見つからなかった。殺処分する」
熊森協会「殺すのは待って、熊森で飼うから」
大阪府「誰がどこで飼うのか」
熊森協会「今思ったことなのでまだ決まっていない」
大阪府「飼うなら具体的な計画を出して欲しい」

熊森協会「当協会は、このクマの命を最優先に考え、当協会が引き取ることを大阪府に申し出ました」

熊森協会、ブログで土地探しが難航していることを発表

熊森協会「今からでも遅くない、錯誤捕獲した場所で放獣すべき」

大阪府知事、会見で「ぜひ飼育したいと言ってくれているところも」と発言

熊森協会、大阪府に「うちは、飼いたいなんて言った覚えは全くありませんよ」

一体どういうことなの……
「殺処分は避けたい、やむにやまれぬ」思いで保護飼育を申し出たとしても、実際に対応する行政としては「飼うのか飼わないのか」こそが重要なのであって、そこに「積極的に飼いたいと言ったのか、やむを得ず飼うように申し出たのか」はあまり重要じゃないのでは、と思う。

熊森協会の関連記事リスト

協会ホームページ(10/28時点)

大阪府豊能町誤捕獲グマ 11/1 誤捕獲されて136日目
この4か月間、当協会は総力を挙げて、大阪府豊能町で誤捕獲されたクマを、「鳥獣保護法」にのっとって山に返していただけるよう、あらゆる行政に働きかけてまいりました。しかし、結果として、放獣していただけませんでした。誤捕獲されたクマを放獣するのは、最低限のクマ保護対策です。日本のクマ保護行政の遅れを残念に思います。

このクマは移送用檻という狭く劣悪な環境の中で、今も必死に生きています。大阪府から殺処分を通告されましたが、わたしたちは殺処分に納得できません。今後は、大阪府民をはじめとする国民のみなさんの協力を得て、民の力でこのクマの保護飼育を実現させていくことを大阪府に申し出ました。2014.10.28
協会ホームページ:トップページより


経過と記事の一覧


6月
大阪豊能誤捕獲グマ1 専門家の手で山に返してやってください
大阪豊能誤捕獲クマ2 飼い主を探すのではなく、山に返してやってください
大阪豊能誤捕獲クマ3 同一個体群として生物を見るべきなのに、行政の厚い壁が救命を阻む
大阪豊能町誤捕獲グマ4 狭いドラム缶檻に閉じ込められて8日目 いったん出して保護を


7月
6誤捕獲されたクマが一時保護されている大阪府豊能郡豊能町て、どんなところ?
8大阪豊能町クマ誤捕獲されて40日目、殺処分の選択肢はないと大阪府庁 早く山に返してやろうよ


8月
9小さな檻に閉じ込められて60日間 宙に浮いたままの大阪府豊能町誤捕獲グマ 一刻も早く山に返してやって 大阪府庁に熊森が提案と要望書を提出
10 8月19日訪問 誤捕獲されたクマ君、もう限界 一刻も早く山に返してやって


9月
11 大阪府、誤捕獲されたクマの殺処分を決定
12 8月20日、大阪府から入った豊能のクマ殺処分決定の電話と熊森の対応<概要>
13 8月21日 クマという言葉を出すと、大阪での土地の購入は、すぐにはむずかしい
8月22日 クマの保護飼育を決めるには、時間がかかる
14 8月25日 くまもりの衝撃:大阪府から、豊能のクマを放獣させてほしいという正式依頼など、1回も受けたことはありませんと、ある近隣府県の行政
15 これまでの豊能グマ問題の総括 大阪府はどうしてクマ1頭の命も助けられないのか
16 今後、大阪府に顔出ししたクマは捕殺 最悪の「大阪府ツキノワグマ出没対応基準」
17 9月5日 豊能グマ、今からでも遅くない、誤捕獲現場で放すべし <現場訪問>
18「大阪府ツキノワグマ出没対応方針」は動物愛護畜産課が勝手に作ったもので無効
19 9月9日付で、豊能グマ飼育環境改善願い文書を提出
20 9月10日 大阪府松井一郎知事 豊能グマに関する記者会見
21 これはひどい 熊森が、豊能のクマをぜひ飼いたいと言ったことになっています
22 イギリスの動物愛護団体から 大阪府松井一郎知事に、豊能のクマ問題で請願署名 数日間で5,312名分の署名が届けられる
23 9月17日、豊能誤捕獲グマのお世話
㉔ 9月18日 朝日放送テレビの夕刻番組「キャスト」の取材


10月
9月22日 朝日放送テレビ 夕方の「ニュースキャスト」が、豊能グマ問題を大きく報道(関西エリア)
10月15日 豊能グマ、藁入れ後、1週間目のご報告

関連して

大阪府豊能町で誤捕獲された熊を山に返そう!ツキノワグマ出没対応マニュアルの見直しを!Get the bear back to the forest!
熊森協会東京都支部から、大阪府知事にあてたweb署名活動。本部じゃなくて東京都支部なんだ。

11月(追記)

冒頭のMBSニュース報道後、はじめて熊森協会が公式ブログを更新しました。が、「引き取ります」という内容ではありませんでした。早とちり報道だったか、あるいは熊森さんが自分達の努力を順を追って書こうとしているのか、それはわかりません。

10月12日 どうする 豊能町誤捕獲グマ 高槻市で緊急集会(11/2更新)

もう10月です。いつになったら大阪府で誤捕獲されたクマは山に返してもらえるのでしょうか。
熊森は、ありとあらゆる手を使って、このクマが、元いた山に返してもらえるように運動し続けてきました。わたしたちは、何も新たなことや変わったことをしようとしているのではありません。
1頭のクマを、元いたところに返す。原状回復するだけです。こんな簡単な、10分で終わることを、いまだに行政はしようとしません。
ドングリが落ちている今でなければ、今年はもう山に返せなくなります。事情が分かっている内輪の者だけで、高槻市で緊急集会を持つことにしました。

とにかくみんなで一致した結論は、大阪府で誤捕獲された今回のクマの命を守ることを第一に、熊森は行動するということです。
(中略)
このような集会を、少なくとも、大阪府各地で持っていかねばならないと感じました。


僕がこれを読んで最初に感じたのは、『地域住民の同意は取れたんですか?』という点でした。
「ありとあらゆる手を使って、このクマが、元いた山に返してもらえるように運動し続けてきました」「1頭のクマを、元いたところに返す。原状回復するだけです。こんな簡単な、10分で終わることを、いまだに行政はしようとしません」と熊森協会さんは仰っているのですが、なぜそれが実現しないのかといえば、「元いたところに返すのが簡単ではないから」です。どこに返すのか。周辺住民に何と説明するのか。同意は得られているのか。ちょっと考えただけでも、解決しなければいけない点は山積みですよね。



熊森さんが「元いた場所に放したい」と言うなら、豊能町の捕獲地点の近くに住んでる方を一軒一軒回って『あなたの家の近くの山にクマを放していいですか? 大丈夫なにもしませんから』と説明するのが最優先だと僕は考えました。
大阪府の定めた出没対応方針(pdf)でも「誤捕獲が発生した際には、人身被害の危険性がないと判断し、周辺住民の合意が得られた場合、速やかに放獣を実施する」とありますから、逆に言えば、同意さえ取れれば放獣が現実のものになる可能性があるということです。
で、熊森協会さんは、実際に説得しに行ったとか、住民説明会を開いたりとか、そういうのはやったのでしょうか? 同意は取れたのでしょうか? 記事の「高槻市で行われた、事情が分かっている内輪の者だけの緊急集会」には、出没地域の住民の方が招待されたりしたのでしょうか?


……僕にはわかりません、書かれていないので。熊森さんは「ありとあらゆる手を」「こんな簡単なこと」と仰っているのですから、住民への説明はもうとっくにチャレンジしていて、ダメだったから別の方向を探っているのかなと想像しました。が、もし、もし仮に、放獣したいというのに地元住民への真摯な説明などをしていなくて、それで別の市で内輪向けの緊急集会をやっているのだとしたら、努力の方向性がズレていると言わざるを得ません。まあ、仮定に仮定を重ねた想像でしかありませんけれど。




11月(追記その2)

10月28日 豊能町誤捕獲グマの引取りと保護飼育を、大阪府に申し出る

6月19日のイノシシ罠への誤捕獲以来、熊森は、何とかこのクマを山に返してもらおうと、総力を挙げて取り組んでまいりました。しかし、大阪府行政は、てこでも動こうとしませんでした。

すでに、捕獲後4か月以上たっていることや、冬籠りの時期が近づいていることなどから、このクマの命を守ることを第一に考えて、熊森は10月28日、大阪府咲洲庁舎21階を訪れ、動物愛護畜産課長らに、民間が力を合わせてこのクマの引き取り、保護飼育を行うことを申し出ました。

飼育場所が完成したら、府民のみなさんに、クマという動物のすばらしさを体感していただく場にしたいと考えています。そして、全生物のため人のため、クマたちを初めとする野生動物たちと共存する持続可能な文明を取り戻していきたいです。

大阪府としては、獣舎建設が完成した時点で、大阪府特定動物飼育基準に合格するものかどうか検査し、合格すれば飼養許可を与えて、クマを引き渡すということでした。


めでたく、熊森協会から「当方で飼養します」という記事が出ました。よかったです。安全に、愛護精神に溢れた飼育をしてもらいたいです。ご英断だと思います。
ただ、記事は「大阪府がやらないから熊森協会がやりました」といういつもの熊森節で、そういう書き方しかできないのかなあと哀しくなります。引き取り先を探されていた府の職員さんが見たら、いい気持ちはしないでしょうね。相手が見ている場で、そういう言葉を使ってしまう迂闊さはいつものことですが、相手のあることですから、「相手=敵、熊森=正義」みたいな二元論の論調は控えたほうがいいのになと僕は思います。


ところで、『大阪府としては、獣舎建設が完成した時点で、大阪府特定動物飼育基準に合格するものかどうか検査し、合格すれば飼養許可を与えて、クマを引き渡すということでした』とありますが、特定動物飼養は、許可申請の時点で構造の図面とかを申請書に添付するはずです(参考:特定動物の飼養・保管について(大阪府HP)申請書様式より)。このたびは「大阪府が引き取り手を捜しても見つからず、熊森協会が飼育を名乗り出た」という流れですが、立場上はあくまで「協会が飼養することを申請、大阪府がそれに許可を与える」というものですから、申請側の協会さんとしては、きちんと許可が出るような書類様式を揃え、設備を検討して、手続に則ってやっていただけるといいなと思っています。







感想など

このニュースを真剣に追っておらず、また地域性のある話題なので、あまり積極的に発言したいと思っていません。とりあえず、箇条書きにしておきます。

  • 熊森協会の意見の中でも「行政の横の連携が取れていない」というのはその通りで、移動範囲が広いクマにとっては県界なんて関係ないのだから、他県での放獣を含め、横断的な連携が取れるような仕組みづくりが必要になってくるだろうなあ。
  • 熊森協会さんの愛護感情を煽るようなやり口は相変わらずで、「意見を届けてください」と行政窓口の連絡先をブログに載せたりする手口も、いい加減迷惑行為でしかないことを自覚して欲しい。
  • 熊森協会の記事の中でも、「豊能グマ問題を大きく報道」の番組紹介記事は、番組の論調が、大阪府のや近隣の行政、研究者や住民の意見を紹介しており、「地元の同意を得るのも難しい」ことが伝わってくるのに、熊森協会の意見は何一つ具体的でなく、実行力の無さが浮き彫りになっていて、その書き起こしから得られる結論がそれなのかよ感がすごい。絶望する。
  • これはやばい

【クマ錯誤捕獲に関する番組書き起こし】行政や研究者の話を聞いてみたよ。近隣住民にも色々な声があって、一意に同意を得るのは難しいよ

【熊森協会の見解】お手本になるべき行政が、鳥獣保護法違反と動物愛護法違反を続け、動物を虐待しています

  • 今からでも遅くない、誤捕獲現場で放すべし」もヤバくて、周辺住民の同意を得るのが難しいって言ってんのに「ここで、檻のふたを開け、逃がしてやればよかったんだ!」だし、「クマを放すと集落に入って来るかもしれないと大阪府がそんなに怖がるのなら、放す時にクマに発信器を付けて放し、そうならないことを確かめたらいいと思います。」とか書いちゃってるし、なんで「そうならない=放獣したクマが集落に入ってこない」前提なの? 発信機にはクマが山に戻る機能がついてるの? 今「入ってきたら危ないから放獣は難しいよね」って話をしてるんだよね? ナンデ?
  • ともあれ、引取りを決定したのは英断で、すごいと思う。ぜひ、クマにやさしい精神で終生飼育して欲しい。
  • できれば、そのまま愛護団体として特化して欲しい。トラスト地内に自然に近い状態で暮らせるクマ園を作って引き取り先にすれば、多分これから有難がられると思う。
  • で、ドングリ運びとかカキ運びとか、そういうのから手を引いて欲しい。
  • ところで今年は実成りが不足というニュースが夏頃から流れていたわりに、熊森協会さんの動きが静か過ぎて不気味だ。webで活動を書くと批判されるから、水面下でやってるのじゃないかと戦々恐々である。
  • 大阪府の「大阪はクマの『生息地』じゃないから、環境省の指針でいう「原則放獣」は当てはまらない(から殺処分もできる)」という論法、ちょっと無理があると思う。いや文面上はそれでいいんだけど、いつまで「大阪府は生息地じゃない」が主張できるか、という疑問が。
  • 参考:環境省 鳥獣の保護を図るための事業を実施するための基本的な指針(pdf)
  • 一方、熊森協会さんも「放獣しないから違法」というのも短絡的というか、根拠なくそういう言葉を振り回すべきじゃないと思う。「お手本になるべき行政が、鳥獣保護法違反と動物愛護法違反を続け、動物を虐待しています」とか、そういうの。
補足

環境省の指針「鳥獣の保護を図るための事業を実施するための基本的な指針(pdf)H23.9.5告知」より、ツキノワグマの錯誤捕獲に関する部分を抜粋。強調はアサイによる。
熊森協会さんはこれをもって「違法」と主張していると考えられる。

Ⅰ 鳥獣保護事業の実施に関する基本的事項
第六 狩猟の適正化
3 網猟とわな猟の適切な実施
網猟免許とわな猟免許について、網及びわなそれぞれの扱いについての専門性を高めることによって、錯誤捕獲及び事故の防止を図る

Ⅱ 鳥獣保護事業計画の作成に関する事項
第四 鳥獣の捕獲等及び鳥類の卵の採取等の許可に関する事項
2 鳥獣の捕獲等又は鳥類の卵の採取等に係る許可基準の設定
(6) 捕獲実施に当たっての留意事項
捕獲等又は採取等の実施に当たっては、実施者に対し錯誤捕獲や事故の発生防止に万全の対策を講じさせるとともに、事前に関係地域住民等への周知を図らせるものとする。
また、わなの使用に当たっては、以下の事項について措置されるようにする。
ツキノワグマの生息地域であって錯誤捕獲のおそれがある場合については、地域の実情を踏まえつつ、ツキノワグマの出没状況を確認しながら、わなの形状、餌付け方法等を工夫して錯誤捕獲を防止するよう指導するものとする。また、ツキノワグマの錯誤捕獲に対して迅速かつ安全な放獣が実施できるように、放獣体制等の整備に努めるものとする。

(7) 捕獲物又は採取物の処理等
捕獲物等については、鉛中毒事故等の問題を引き起こすことのないよう、原則として持ち帰ることとし、やむを得ない場合は生態系に影響を与えないような適切な方法で埋設することにより適切に処理し、山野に放置することのないよう指導するものとする(適切な処理が困難な場合又は生態系に影響を及ぼすおそれが軽微である場合として規則第19条で定められた場合を除く。)。さらに、捕獲物等が鳥獣の保護管理に関する学術研究、環境教育等に利用できる場合は努めてこれを利用するよう指導するものとする。
また、捕獲物等は、違法なものと誤認されないようにする。特に、クマ類及びカモシカについては、違法に輸入されたり国内で密猟された個体の流通を防止する観点から、目印標(製品タッグ)の装着により、国内で適法に捕獲された個体であることを明確にさせるものとする。
なお、捕獲個体を致死させる場合は、できる限り苦痛を与えない方法によるよう指導するものとする。
さらに、錯誤捕獲した個体については原則として所有及び活用はできないこと、放鳥獣の検討を行うこと、狩猟鳥獣以外においては捕獲された個体を生きたまま譲渡する場合には飼養登録等の手続が必要となる場合があること、また、捕獲許可申請に記載された捕獲個体の処理の方法が実際と異なる場合は法第9条第1項違反となる場合があることについてあらかじめ申請者に対して十分周知を図るものとする。
ただし、錯誤捕獲された外来鳥獣等の放鳥獣は適切ではないことから、生態系等に被害を及ぼしている外来鳥獣等が捕獲される可能性がある場合には、あらかじめ捕獲申請を行うよう指導し、適切に対応するよう努めることとする。

2014.11.01 9:10 環境省の指針について追記。
2014.11.02 10:00 報道後、くまもりNEWSが更新されたので追記しました。
2014.11.05 17:30 飼育決定に関する報道を追加しました(NHK動画ニュース)
2014.11.08 10:00 熊森協会から飼養する旨を知らせるくまもりNEWSが更新されたので追記しました。