紺色のひと

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透明人間が約束を破った

生活の由無しごとから自分の考えを掬いとることを意識してきたつもりだった。暦は九月になろうとしていて、この街は遠空と秋雨の季節に差し掛かっている。高校の頃、夏休みが終わり、学校祭の準備をして、当日晴れた空があまりに高くて秋を感じたことを思い出した。溜まり場だった二階の隅、そこに出入りしないで卒業する生徒も多くいたであろう地学教室の、出窓の縁に腰掛けて、冷たくなった風を顔に当てながら帰宅する他の生徒を眺めていた。
そして雨が降る。会社の卓上カレンダーに予定を書き込んでいるうち、既に一年の四分の三を捲ってしまっていることに気づいて愕然とした。九月の予定も既に全て埋まっていて、平日で札幌に居る日は一週間もない。緑色の手帖を開く回数も減ってしまったし、キーボードの前で心を叩き出すこともなくなってしまった。
「透明人間が約束を破った」という言葉をニュースで耳にした。誰かが誰かを傷つけたという報道だったけれど、その約束を破る、というところが妙に心に残っている。約束をするのは苦手だ。