すべてのことは
すべてのことは思うようにゆかない
実篤先生はその後に、「けれどおれは辛抱強く我慢してしっかりやってやんよ」みたいなことを続けていた。先生の言葉は昔から、まっすぐすぎて好きだった。母が若い頃に読んだという詩集に線を引いて読み返した。時折母の線と僕が引いた線が重なった。まっすぐにまっすぐにと思って、けれどそう、すべてのことは思うようにはゆかないのだ。「人生そんなもんだよ」なんて達観めいたことは絶対に言ってやるもんか、と昔から思っているけれど、「すべてのことは思うようにゆかない」だけは信じていられる。だから、誰から最低な人間だと思われようと、誰を泣かせようと、思うようにゆかないことに耐えていなければ。そして思うようにゆくことのためなら、僕の体なんて百ぺん焼かれても、
焼かれてたまるか!
だから、焼かれる前に、望みを叶えなくてはならない。
- 作者: 武者小路実篤,亀井勝一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1953/01/13
- メディア: 文庫
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この道より他に 我を生かす道なし この道をゆく
そうまで胸を張れるかはわからないけれど、だから、何度でも言うけれど、僕はやってゆかなければならないのだ。