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紺色のひと

思考整理とか表現とか環境について、自分のために考える。サイドバー「このブログについて」をご参照ください

ウチダザリガニを食べて、外来生物のことを考えてみた

環境 生活


少し早いお盆休みを取って、北海道の東側に行ってきました。
目指すは道内でも数少ない怪獣伝説のある湖、屈斜路湖! 当然怪獣の名前はクッシーなのですが、似た名前のクッタラ湖やクッチャロ湖にクッシーはいるのだろうか、とかそんな非建設的なことを考えているうちに到着しました。
今回、この湖に来た主な目的はザリガニです。ザリガニを本気で獲って食うのです。食用として日本に持ち込まれ、今は北海道や福島県を中心に広まって問題視されている外来生物ウチダザリガニです!

【もくじ】

  1. 屈斜路湖でザリガニクッキング!
  2. ウチダザリガニ外来生物法について
    • 外国から入ってきた生物についての説明です。
  3. 環境教育として行う外来生物の『駆除』について思うこと

屈斜路湖でザリガニクッキング!】

ここ屈斜路湖は湖岸で温泉が湧いており、貧栄養であまり生物の多くない湖です。ちょうど雨の後で少し濁りがありますが、晴れている日、ぬるい水の中から夕暮れを眺めるのはなんとも言えず心が震えます。



和琴半島湖畔キャンプ場に荷物を置いて、もうちょっと石がごろごろしているところに行ってみましょう。



あ、いた! 歩いてる! しかも結構デカい!

屈折の関係で、水の中の生き物は空気中よりも大きく見えるものなので、実際に獲ってみると少しガッカリすることのほうが多いのですが、それはともかく。


石をめくってみると、


こんな感じ。石の下の隙間に隠れていますね。


※ちゅういてん※
外来生物の捕獲については後ほど真面目な話をしますが、ウチダザリガニ「生体での移動」が法律で禁止されています。原則、獲った場所で殺処分をするか、その場で放流するようにしましょう。ここでは獲ったその場で処理をしています。


「さぁそれではね、この水揚げされたばかりのウチダザリガニでね、スパゲッティを作りますよー」(土井善晴のモノマネをする大泉洋ふうに)

(2分25秒から)



まずね、獲ったザリガニを鍋で茹でていきますよー。寄生虫が怖いから加熱はしっかりねー


尻尾とはさみの部分は身が入ってますからねー、殻をむいて取り出しておきましょうねー。背ワタはここで取り除きましょうね


さあ、鍋にバターを落としてニンニクを炒めていきますよー


ここでザリガニの身をむいた残りを入れて炒めてですね、


しばらく火を通したらトマト缶を投入しますよー


さあね、煮詰めて塩で味を調えて、ざるで殻をこしていきますよー


茹でたスパゲティとあえて、身を添えてさぁ、完成です。夏野菜スペシャル…じゃなかった、ウチダザリガニのパスタ、アメリケーヌソース風でございます!

うめえ! ザリガニ少ないせいかちょっと物足りないけど、普通のトマトソースよりはるかにコクがある感じがうめえ!
身はカニとエビの中間、みたいなことがよく言われていますが、僕はどちらかというとカニに近い印象を受けました。


ウチダザリガニ外来生物について】

さて、お腹も膨れたところで、今回の食材ウチダザリガニについて学んでおきましょう。

ウチダザリガニとは


本図は環境省 北海道地方環境事務所作成 「特定外来生物ウチダザリガニ」リーフレットより引用(pdf)
日本国内では、淡水に棲むザリガニの仲間が全部で3種*1います。ニホンザリガニ、アメリカザリガニウチダザリガニがその3種で、うち昔から日本国内に生息している種(在来種といいます)はニホンザリガニのみ。アメリカザリガニウチダザリガニはいずれも明治時代以降に日本国内に持ち込まれた種(在来種に対して外来種、または外来生物といいます)として扱われます。
ちなみに、アメリカザリガニは「食用として日本に持ち込まれたウシガエルの餌とすべく持ち込まれたものが逃げ出し広まった」もの、ウチダザリガニは「食用として北海道の摩周湖に持ち込まれた」ものです。


ウチダザリガニ外来生物法について

このウチダザリガニは、外来生物――正式名称「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」によって「特定外来生物」に指定され、飼育や野外へ放つことなどが厳しく規制されています。なぜかというと、『生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれ』があるとされているからです。具体的には、ウチダザリガニはニホンザリガニやマリモなどの在来種に対し、

  • 直接的被害……在来種であるニホンザリガニやマリモを食べてしまう
  • 間接的被害……病気(ザリガニペスト)の感染により、その場のニホンザリガニを死滅させてしまう危険性

などの悪影響が危険視されています。


先に挙げたリーフレットでは、

ウチダザリガニは、湖や川の水草や貝などを食べてしまうので、小魚やエビの住みかやタマゴを産む場所が奪われてしまったり、もともといた魚が減ったりしてしまいます。
もしこのままウチダザリガニが増えてしまうと、貝や水草が減り、魚やエビなどほかの生き物は湖や川で暮らすことが難しくなってしまいますし、ウチダザリガニに食べられることで、魚の数も減ってしまいます。魚の数がへると、魚を食べて生活している鳥も困ってしまいます。
また、外来生物であるウチダザリガニは、他のザリガニに伝染する病気を持っているので、日本固有の種であるニホンザリガニへの影響も心配されています。その他にも、私たちが予測できないような影響が出ないとも限りません。

と説明しています(図、文は環境省 北海道地方環境事務所作成 「特定外来生物ウチダザリガニ」リーフレットより引用(pdf))


現在、日本国内でウチダザリガニが確認できるのは、北海道各地の川や湖沼のほか、本州の一部(福島、長野、滋賀、千葉、福井)で見られるようです。捕まえたあと、生きたまま別の場所に移動させたり、持って帰って飼ったりすることは絶対にやめてください。その場で放すか、殺してしまう場合は問題ありません。

本図は環境省 釧路自然環境事務所 ウチダザリガニリーフレットより引用(pdf)
なお、ウチダザリガニの捕獲は、ダイバーによる本格的な駆除活動が行われている他、各地で環境教育として小中学生を参加させたイベントが行われてたりしています。また珍しい例では、観光資源として捕獲体験をさせる例などがあります(洞爺湖、外来種駆除観光に ウチダザリガニ捕獲体験−北海道新聞)。


【環境教育として行う外来生物の『駆除』について思うこと】

うーん、こういったパンフレットだと、『外来生物に罪はありません』『人間の責任』みたいなことが書いてあるよなあ。ウチダザリガニを食べること自体に罪悪感はないけど、なんか引っかかるなあ。
……おや? 湖に波紋が……


!?


娘マチ子(2歳)「ニンジャ! ニンジャ!」


「ドーモ、お困りのようだなアサイ=サン……リバーズエンドです。」


アイエエエ!川ボーイ師父(せんせい)ナンデ!? 投網を打ってみたりサケと遡上してみたりといった当ブログの川ネタには必ずと言っていいほど登場する、都合のいい説明キャラめいた川ボーイ師父じゃありませんか! 実際ニンジャスレイヤーの読みすぎですよ!


「そんなことはどうでもいい、君が落としたのは……このウチダザリガニかね?」


「それとも……このニホンザリガニかね?」


どっちも落としてませんよ! だいいちこの湖にはニホンザリガニはいないはずじゃ……*2
「細かいことはいいんだよ、それより話は聞かせてもらった。外来生物の『駆除』ということについて考えているんだな? なんだ、『既に日本の自然に入り込んでしまっている外来生物を駆除するのなんてムダ、かわいそうだし税金の無駄遣い』というアレか?」
いえ、特定外来生物を、税金を投入して駆除することに疑問はないんです。根絶は難しくても、捕獲圧をかけることで被害の拡大を抑えられたり、食用方面に利用できたりといったメリットはありますから。
僕が疑問に思っているのは、それを「環境教育の一環」として行うことなんです。細かい話ですが、ウチダザリガニ駆除に小学生が関わるのが気に入らない」んです。
「ふむ。確かにウチダザリガニは、小中学生が参加する環境教育で、ザリガニ釣りから料理を体験するイベントが企画されていたりするな。NPO主催のものも、公機関が主催するものもある」


はい。生き物に触れて、体験することでその大切さについて学んでもらう――というというコンセプト自体はいいんです。僕があれ?と思うのは、そこに「積極的に命を奪う」プロセスが含まれていることです。
ウチダザリガニの駆除イベントでは、その名の通り駆除――捕まえて、殺すわけです。「日本の環境で悪さをしている」ことを伝えたうえで、それを退治する役割を子供に与えます。しかし、これは「持ち込まれた外来生物自体は悪くない」ということと、一部で競合しうる考え方です。なぜなら、前者は「命の重さには優劣があり、殺されても仕方ない命がある」ことを、後者は「命に貴賎はない」ことの言い換えだからです。

「――しかし現実問題として『命の重さに優劣はある』のだから、こうした駆除や保護活動が行われているわけだろう? 重みのことを言い出したら、絶滅危惧種のランク指定だってなんのためにあるのか――」


そんなことは分かってます。ただ、そのへんの機微を、小学生くらいで理解できるとは僕には思えません。僕は、大人が子供に「殺してもいい命があるんだよ」と伝えて、環境教育の名の下に駆除の作業人員として扱うことに疑問を感じているんです。
「人間の責任」と言うなら、大人が後ろめたくこっそりやればいいんですよ。「バスターズ」なんて名前がついてるイベントもありますけど、小学生にしてみたら完全に「悪のザリガニを倒す正義の自然保護活動」ですよ。そういう善悪二元論の環境観が、おかしな自然保護活動に結びつくんです! 林業害悪論とか! クマにドングリをあげれば助かるとか!


「とすると君の主張は、駆除活動に参加させるなら、せめて保全活動や駆除の是非について理解できる年齢にしたほうがいい――くらいでまとめていいのかね」
ええ、それでかまいません。僕も環境教育イベントに参加して子供相手をしてるんですけど、生き物に興味のある子でも、小学校高学年か中学生になるくらいで、ようやくその辺の話を持ち出せる印象ですね。

【おわりに】

子供に生き物や環境のことを伝えるにあたって、知識だけでなくて、人間としての責任の取り方とか、影響力の大きさとか、振舞い方とか、そういうものも一緒に感じ取れるような活動ができたらいいとは思ってはいるのです。
ウチダザリガニの駆除については、これまでの実績になってしまっているだとか、実際の人員確保が厳しいだとか、子供向けイベントとしての成立させ易さとか、様々な具体的事項から、僕の考えが理想論に過ぎないというのもわかってはいるのですが、仮にも教育として子供に伝えるなら、大人なりの伝え方があるはずだ、と考えています。


ところで、ウチダザリガニの扱いについて、現地ではどのような感じなのかな、とキャンプ場の管理人さんにお話を伺ってみたところ、「獲っていいやつだよ…あれダメなんだっけ?」とちょっと曖昧なご返答だったので、押し付けがましくならないように法での規定についてお話しました。
生体での移動が禁止されているので、獲って持って帰ったり、飼ってみたり、またそれを飼えなくなって”自然に還したり”といったことが禁止されていることをお話すると、今度からキャンプに来るお客さんにそれとなく伝えていただけるとのことでした。よかった。
子供連れでザリガニ獲りを楽しんでらっしゃる方が多かったので、そのまま持って帰ってしまうひとはごく普通に居そうな印象でした。環境省の皆様におかれましては、国立公園等の各ビジターセンターにパンフレットを置くほか、こういった「生息地に接した場の管理活動をされている民間」さんに対しても、情報の周知を行う必要があるんじゃないかな、と感じました。


おしまい。


【参考資料】

*1:滋賀県のタンカイザリガニをウチダザリガニと同種と扱った場合

*2:ニホンザリガニの撮影は別の場所で行っています。

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