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紺色のひと

思考整理とか表現とか環境について、自分のために考える。サイドバー「このブログについて」をご参照ください

北海道の冬、原発なしで電力は足りるか?について考えてみた

生活

全国的に「節電の夏」です。大飯原発の再稼働に始まり、反原発デモ、関西電力大阪市長のやり取りなど、原発・電力関連のニュースが連日流れています。僕の住む北海道では、「北海道で24時間の節電検討」という次の冬が心配になるニュースが…。本エントリでは「北海道の冬、原発なしで電力は足りるか?」をテーマに僕が考えてみたプロセスを示してみたいと思います。
なお、記事がとても長いです。ほくでんの発表した「今冬の電力需給について」の要約部だけでもお読み頂ければ幸いです。


◆三行まとめ

  • 北海道の電力需給は冬にピークがあって、暖房など生活に直結するものが多いので、停電などが起こるのはなんとしても避けたい。
  • 泊原発が止まっている今、冬の需給は厳しいとされている。一方で足りるという意見もあるけど、どっちも見てみると、やっぱり足りないんじゃないかと思える。
  • 「足りる」という意見の中には、根拠のないものや陰謀論が含まれているものもあって他人事のように感じた。

◆もくじ

  1. はじめに
    • 本エントリの目的について。
  2. 考えるにあたっての前提条件をいくつか
    • 「電力は足りるか」を考えるにあたって、僕のスタンスや基礎知識などを紹介。
  3. 北海道の冬の電力需給について(ほくでん資料の読み解き)
    • 北海道電力の発表した今冬の需給予測について、資料を引用して読んでみた。
  4. 「(原発がなくても)北海道の冬は電気が足りる」とする主張について
    • 逆に「電力は足りる」とする主張を集めて読んでみた。
  5. 「足りる」論や「電力会社の陰謀」論について僕が思うこと
    • webで「足りる」と言っているひとに対する僕の印象など。
  6. まとめ
  7. 考えるにあたって参考にさせていただいたリンク集

◆はじめに

北海道では、お盆を過ぎたら秋はすぐそこ。しかしつい先日この夏一番の暑さを記録したり、今年の残暑は厳しいようです。
さて、全国ではまだ夏の節電真っ盛りですが、僕の暮らす北海道では既に「今冬の電力需給がヤバい」という話が出始めています。それもそのはず、北海道の電力需要はピークが夏ではなく冬にある、という特徴があるのです。
8月23日、こんなニュースが流れました。

政府、北海道で24時間節電検討 全国初、今冬の平日に−47NEWS
冬に電力需給の逼迫が懸念される北海道で、政府が一般家庭や事業所を対象に、12月から来年3月までの平日、24時間の節電要請を検討していることが22日、関係者への取材で分かった。北海道電力泊原発泊村)の運転再開のめどが立たないためで、24時間の節電要請は全国で初めて。
道内は暖房に加え、路上や屋根の雪を溶かす設備の稼働により、夜から朝にかけても昼間と同様、電気使用量が多いという事情が背景にある。政府内では2010年度比で5〜10%程度の節電案が浮上している。
http://www.47news.jp/CN/201208/CN2012082201002097.html


このニュースの内容や影響についてはひとまず置いておきます。本エントリでは、そもそもなぜ「節電が必要」という話が出ているのか、電力供給はどのような状況なのか、ひいては「それで、電力は足りるの?」という疑問について考えたいと思います。
「電力足りる足りない」という話題については、「足りる、原発を再稼動させたい政府や電力会社の脅しだ」という意見から「そもそも建設的でない」という声まで様々聞かれます。それらは承知の上で、改めて「北海道の冬」という条件で考えてみた内容として、できれば一緒に考えていただければと思います。



◆いくつかの前提条件

本件を考えるにあたり、僕のスタンスとか置かれている状況とか、北海道の電力需給の特徴について、簡単に説明しますね。

僕のスタンス

北海道生まれ、在住。本州での生活経験あり。現在生後4ヶ月の子どもがいることもあって、突発停電による暖房停止などは非常に心配です。
原発の影響について、不安もあります。長期的にみて、国内・世界的に原発が漸減することを望んでいますが、だからと言ってより近接するリスク(それこそ子どもが寒さで体調を崩すなど)を放り出していいとも思えません。中長期的な目標とは別に、短期的な電力不足が発生するなら、手段として再稼働を選ぶこともやむを得ないのでは、となんとなく考えています。
心情的には「これまで原発アリで賄ってきたものが、なくなっても大丈夫」だとは俄かに信じがたい気持ちがあり、「原発なくても電力足りる」論を鵜呑みにすることはできないと考えています。ただ、原発がなくても確実に電力需給をまかなえると納得できる論拠があれば、それを支持するのもやぶさかではありません。

北海道の電力需要の特徴

北海道の電力需要のピークは冬にあります。またピークとそうでないときの差が小さく、本州の夏に行われたようなピークカット手法が有効ではありません。また冬季に増加する電力需要の多くが暖房関連であり、節電による削減効果が見込めない…などが挙げられます。このあたりは次項で解説します。

泊原子力発電所の状況

昨年(2011〜12年)冬は泊原発3号機が稼動していましたが、2012年5月5日に定期検査のため停止し、この時点で国内で稼働中の原発がゼロになりました。現在、泊原発1、2号機の再稼動要件となるストレステストが終了し、7月に経済産業省原子力安全・保安院による立ち入り検査が行われたものの、最終的な評価は行われていない状況です*1
7月時点では11月の再稼動を目指すとされてきましたが、冬前の稼動は難しそうな現状と言えます。

北海道の冬の停電リスクとインフラの役割

主たる暖房器具・ボイラーは灯油によるものですが、当然電気制御で温度管理・着火を行っているわけで、停電時には使えないものがほとんどです。また道路管理(除雪・信号・ロードヒーティング)や水道(凍結による水道管破裂)など他のインフラ(=インフラストラクチャー:社会基盤・資本となる施設設備)に多大な影響が出ることもあり、北海道において冬季の電力は夏以上に直接人命に結びつく生活基盤であると言えるでしょう。冬の北海道における停電リスクは大きく、突発的な停電ともなれば、その影響・対応はなお大きくなることが予測されます。電気の切れ目が命の切れ目、というと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、冬の北海道ではあながち間違いでもないのです。

歩道がロードヒーティングされており、雪が積もらない繁華街ススキノの歩道



◆北海道の冬の電力需給について

…以上、このあたりの認識を共有したうえで、「今年の冬、北海道で電力が足りるか?」について考えてみるため、ほくでん発表の資料を読んでみることにしましょう。
資料として、ほくでんが7月31日に発表した「今冬の電力需給について」より、表とグラフを引用します。
※なお本資料は無断転載を禁じられていますが、本エントリへの引用は北海道電力さまより許可を頂いています。本エントリの画像の転載はご遠慮ください。

北海道と本州の電力需要の違い

北海道では、11月から電力需要が増加し、12月〜2月にかけて年間のピークが発生します。エアコンなど冷房需要の増加による本州以南と大きく異なりますね。

北海道の季節による違い

続いて、北海道の夏と冬の違いをみてみましょう。
冬の電力需要で大きな割合を占めるのが、暖房そして照明。寒くなるのはもちろん、暗くなるのが早いので点灯時間が長くなるわけです。さらに、寒さによる影響として、室内暖房のほかに融雪による需要が発生します。道路上に積もった雪を融かすロードヒーティング、家庭用の雪を排雪する融雪槽、水道管の凍結を防ぐヒーターなど、日中以外、ものによっては24時間つけっぱなしでないといけないものが存在します。このため、夏と比べて昼夜の需要差が小さく、ピーク需要を別の時間帯に振り換えるピークシフトが困難となります。

電力不足の影響

先に紹介したニュース「24時間節電を検討」の反応をまとめた記事をみると、生活に大きな影響があるだろう、と多くのひとが予測しているのが伝わりますね。実際のところ、冬季は暖房や融雪機器が生活を支えているため、冬向けの機器を対象とした節電は困難と考えられます。

今冬(H24~25冬)の供給力

7月現在、今冬の電力供給力は最大で約584万kWと予測されています。泊原発3号機が稼動していた昨冬と比べ、66万kWの供給力不足となるようです。


なお、この予測が発表された後、8月17日付けで7.4万kW程度の緊急設置電源を追加することが発表されました。ディーゼル発電機80台による力技です。
この供給力を確保するため、水力2機・火力2機の定期検査を繰り延べする等の方針を採った結果、現時点での供給力見通しは以下の表のようになります。


原発を除いた「設備容量」621万kWに比べ、564〜590万kW程度が確保できると考えられています。621万kWをフルで確保できないのは何もサボっているからではありません。水力発電が設備容量の55〜70%しか使えないのは、冬に川の水が少ないという理由によります。水力発電の約6割を占める自流式、つまり河川の水量をそのまま発電に利用するタイプの発電所がこの影響を受けます。


これら供給力に対し、需要予測を当てはめ、「足りる」かどうかを検討します。数ヶ月先の気象条件がどうなるかなんて正確にはわかりませんから、今までの最大需要があった実績の579万kWとします。
この需要予測に対し、予測された供給力はわずかに上回っている状態です。ただ、これをもって「なんだ足りるんじゃん」と判断するのはあまりに危険です。なぜなら、電気は作ってから大量にためておくことができず、急に需要が増えたときに対応できるよう、常に余分を持っておく必要があるものだからです。これを供給予備率といい、ほくでんでは今冬最低限必要な供給予備率を3%としています。これが確保できないおそれがある、ということですね。


計画外停止を見込んだリスク管理

ここまで、「現在使える発電所や送電設備などが全て無事故で動けば」という前提で話を進めてきました。しかし、機械を使い続ければどこか調子が悪くなるもの。だからこそ、悪くなる前に定期的にメンテナンスを行うことが重要です。ただし、それでも突発的な停止というのは起こってしまうものです。それは発電所に限らず、本州との間で電力をやり取りする「北本連系」も同じことです。
…というわけで、突発的な停止による大規模な停電を避けるためには、「どこか発電力の大きい火力が止まっても大丈夫なようにしておこう」というように、あり得るリスクをあらかじめ想定したうえで、それを見込んだ対応をしておこう、という考え方をするわけですね。


具体的には、「どこかの火力発電所が止まるかもしれない」「もしかしたら本州からの送電設備でも故障が発生するかもしれない」という、過去に実際に発生した案件をリスクケースに考えてみています。

まとめ

ざっくりと資料を読んでみました。最後に、簡単にまとめてみましょう。

  • 泊原発の発電再開が見込めない現状、安定供給に必要なだけの電力を確保できない可能性がある。
  • 計画外の停止が複数台発生した場合、1日24時間にわたって供給電力量が深刻に不足するおそれがある。



重機と融雪剤を併用した除雪風景。(写真は「今日の道北」さまよりお借りしました)



◆「(原発がなくても)北海道の冬は電気が足りる」とする主張について

ここまで、ほくでんの発表資料から「原発が再稼動しない現状、電力需要が厳しい状況にある」という点についてみてみました。
ところで、webでは「いや、原発が止まっても電力は足りる」と主張されている方が一定数いらっしゃいます。原発に非常に大きな事故リスクがあることは既に国民の知るところとなっていますし、世論の流れも脱原発に傾いているといってよいであろう現状、「原発がなくても大丈夫」とする主張は魅力的です。ただ、これまで発電量の2〜3割を占めていたはずの原発がすべて止まっても問題ない、とする主張に疑問も残りますね。ということで、いくつか主張を見てみることにしました。

ISEP 環境エネルギー政策研究所(飯田哲也所長)による主張

北海道電力は冬に需要のピークがある。北海道電力は全原発が停止しても冬の需要を大きく上回る設備がある。
【ブリーフィングペーパー】原発を再稼働しなくても夏の電力は足りる(2012年4月23日)P12より引用


本資料は今夏を前に、政府国家戦略室 エネルギー・環境会議における資料として用いられたものの元資料です。
夏を前にしての資料なので、あまり北海道の冬について述べられてはいないのですが、「設備がある」ことが「需要を満たす」ことの説明にならないのはわかります。


元ほくでん社員の方による主張

元ほくでん社員、水島氏(総務畑で、技術分野ではないとのこと)による主張。

「私が訴えたかったのは、北電には段階的に泊を停める計画をつくって欲しいということ。3号機も20年ぐらいで廃炉にするとか、長期的な計画を立てて貰いたい。同時に、できるだけ早く風力や太陽光などの自然エネルギーに転換していく。そうすれば電力は充分に賄えます。」
「風力と太陽光、合わせて270万kW以上の申し込みがあったわけですよね。それだけあれば、原発なしでもやっていけますよ。」
「今の連系申し込みをすべて北電が受け入れたら、2年ぐらいで自然エネルギーに転換できますよ。」
元北電職員が実名激白 「原発ゼロでも電気は足りる。泊停止を機に自然エネ転換を」−ニコニコニュースより引用


タイトルは派手ですが、『できるだけ早く風力や太陽光などの自然エネルギーに転換』とあるように、北海道の新エネルギーの買取制度を進めてゆけば新エネの単価も下がり、普及するだろうとのご主張のようです。そこまでおかしな主張ではないと感じました。


一方、水島氏に取材したこちらの記事では。

北電の742万kwと表2・3の148万kwをたすと890万kwになる。例え北電が泊原子力発電所を休止させ続けたとしても、890万kw−(原発分)207万kw=683万kwの発電能力はある。
北海道・泊原子力発電は本当に必要なの?−JanJanBlogより引用

泊原発がなくても、ほくでん以外の電力会社、および独立発電事業者と特定規模電気事業者の供給をすべてほくでんが買い取れば、風力、太陽光、流れ込み式水力の稼働率減を引いても足りる、とのご主張をされているようです。冬季に稼働率がどれだけ減少するとか、買い取り先をフル稼働させられるのか(コメント欄でIPPには安定供給義務がない点を指摘されています)、そもそも全額買取が可能なのか等、気になる点がいくつかあります。

ブログ「北海道で電力不足は起きるのか?改訂版」

http://kaneboyfoods.blog88.fc2.com/blog-entry-619.html
北海道の認可電力量から原発のぶんを引けば冬季の最大需要を満たせる、とするご主張。
上記で見てきたように、冬季は水力ともにフル稼働できる状況にないうえ、通常時でも「認可されている量」すべてを稼働できると考えるのは、リスクが大きすぎること、整備などで止まっているものを考慮していないことから非現実的だと言えるでしょう。
ブログ主さんは北海道新聞の記事を引用したうえで

ここで紹介した総発電量(認可出力)及び「埋蔵電力」を100%使えるかと言えば、それはまた別の話になります。こういう数字を元に足し引きして「電力が足りるぞ!」とドヤ顔するのは、やや勇み足。しかし、電力会社も埋蔵電力の活用については企業秘密。手の内を見せず、「電力不足!」と大騒ぎされるのも フェアではありませんよね。

と書いておいでです。ただ、この埋蔵電力の有無については、根拠のある主張をまだ見たことがないので、コメントは控えさせていただきます。

ブログ「泊原発がなくても北海道は停電しない」

泊原発がなくても北海道は停電しない - SKY NOTE

融通を受ければ、供給量は532万kW+60万kW=592万kWとなり、2011年のピーク時の消費電力579万kWを上回る。

原発が稼動していない状態の総電力と本州からの受電を足し、さらに節電を行えば足りる、とするご主張。
この主張には穴がいくつもあって、「冬季に水力発電がフル稼働できないことを考慮していない」「冬季に増加する電力を夏と同様の節電によって節約できるか定かでない」「定期検査による停止分を考慮していない」「計画外停止の突発的電力供給力減少のリスクを考慮していない」ことが問題点として挙げられると考えます。

旭川脱原発団体「今だから」による主張

泊原発を止めても電力が不足しない理由
主に夏季の電力不足について、詳しくほくでん他の資料から検討されています。

北電のピーク時供給力(自家発電買電分を含む)は今冬(2011年度)、650万kW前後で推移しており、それに対し最大使用電力は500万kW前後、多い日でも561.8万kW(過去最大は578.8万kW)であり、供給余力(余っている予備の電力)は概ね91万kW以上と、泊原発3号機(定格出力91.2万kW)と同等の値を維持しています。 また、冬期は関東圏の電力余力が大きいため、海底ケーブルの上限60万kWまでは東電などから融通してもらえます。従って泊原発3号機を今すぐ止めても(或いは泊1・2号機を再稼働させなくても)電力不足にはなりません。


昨年冬は最大使用電力が500〜561万kWで、泊3号機が稼動していたときに650万kWの供給電力があったので、泊3号機(91万kW)の分を引いても足りる(足りないときは本州から受電すればよい)とのご主張です。ほくでんは今冬の電力供給力を最大で約584万kWとしており、このご主張よりも供給力は多いのですが、それでも「足りないかもしれない」と結論づけていますよね。これはリスクをどれだけ重く見るかの差だと言ってよいでしょう。
自家発電設備や他社からの買取を進めるべき、という主張には賛成できるなと感じました。


原発なしでも電力は足りる」の主張を見た感想

……以上、「原発がなくても北海道は停電しない」とする主張をいくつか見てみました。さすがにほくでんよりも詳細な検討をしておられる方はいらっしゃいませんが、発表された資料から色々と検討されているのが窺えます。
ただ、頷ける部分がある一方、いくらなんでもその想定は甘すぎるだろ、と感じるものや、ちょっと他人事すぎやしないか、と感じるものもありました。
同じデータ(ほくでん及び経産省)を使用している以上、検討された「足りる・足りない」の説得力は、いかに実情に即したものか、あるいは「何かあったときのリスクにどう対応するか」ということが判断材料になると僕は考えます。
これまで見てきた資料、主張の中で、僕はほくでんの「今冬は厳しい」という主張に最も説得力を感じました




街灯のない、郊外の道路。吹雪になると視界が大変悪くなります。(写真は「今日の道北」さまよりお借りしました)



◆「足りる」論を見てきて、僕が感じたことをいくつか書いてみます。

「脅しだ」とする意見についての他人事感

ここ1,2ヶ月ほど、「電力会社の脅しだよ、電力は足りる」と仰る方々の発言を読んでいました。資料が紹介されていたら読んでもみました。「停電など起こるわけがない」との前提に立てば、ほくでんの「今冬の電力需給が厳しい」という報告は脅しに見えるのかも知れません。
でもね。「停電しない」「電力は足りる」とする意見に、僕は自分が納得するだけの根拠を見出すことができなかった。依然として「停電したらどうしよう」という不安は消えないのです。
僕が知りたいのは、本当に電力は足りるのか、足りるとしたらそれはどのような理由でなのか、足りないとしたらどうやったら停電などが起こらない手法が取れるか、そのための課題は何か、という現実に反映することのできる根拠なんです。
「停電するなんて電力会社の脅しだ」という方の発言は、徹頭徹尾、他人事なんじゃないかとさえ思えてしまいます。だって、「停電しない」という前提にいる限り、「停電したらどうしよう」ということを考えなくても済むわけです。北海道の冬の生活で「停電したらどうしよう」という「もしも」に向き合ったとき、それに対してできる手段は何なのか、きちんと考える必要があるのだと僕は思います。
あ、もちろん「停電するぞ」と不安を煽りたいわけではありません。「停電するのは困るから、そのために何が必要なのかを考えよう」と言いたいのです。

「電力会社の出す情報は信用できない」のに?

この意見、本当によく見かけます。実際にほくでんは以前、泊原発の建設に絡む地域説明会でやらせを行った、と報道されていることもあり、そういった心理が働くのはよくわかるつもりです。
ただ、「電力会社は信用できない」と言っている識者も、電力会社や経産省の発表したデータを元に検証を行っているわけです。それに、「電力会社が信用できない」のに、「『電力会社は信用できない』と言っている人の言うことを信じる」ことができるのは何故なのでしょう? つじつまが合わないと思いませんか? それは「自分の信じたいものしか信じない」と言っているのと同じではありませんか?

「まだ電力足りないとか思ってるの?」という意見に対して

何度か見かけたり、言われたりしました。「まだあんな脅し文句信じてるの?」「まだ原発止めても電力足りないとか思ってる人いるんだ…」みたいな具合に、です。
でも、そういう方に「なぜ足りると思うのですか?」と聞いてみても、その根拠を教えてくれることはありませんでした。知ってるのであれば教えてくれてもいいのにな、とは思いましたが、知りたいのだから、自分で調べますよね。
結局、その答えを知る事はできませんでした。というより、「根拠を持って『なるほど原発なしでも電力は足りるな』と納得できるだけの意見」は見つからなかったのです。大抵は陰謀論に端を発していたり、前述のように甘すぎる見通しだったり…。
幾人かの方とやり取りをしていて、「足りる」という結論ありきの思考停止なのかもしれない、と感じました。僕は足りるかどうか疑問なので、「どうして」足りるのかが知りたい。その「どうして」の根拠が「電力会社は信用できない」「道知事の金儲けのためだから」って、それはあなたの抱いた印象であって、誰もが思うことではないでしょう。

何を持って「電力足りた」とするか

この話は最初に書くかどうか迷ったのですけれど。
「電力足りる」という意見のひとは、「停電が起きなかったから足りた」と思っているのかも知れません。でもその陰には、多くのひとの苦労や我慢、体調不良、金銭的損失などがあったことを忘れてはいけないと思います。「停電しなかった」=「電力は足りている」ではないのです。
供給が需要に追いつかないかも、と予測されている状況で、実際に需要が供給を超えてしまったら、大規模な停電は免れません。現代社会において、突発的な停電がどれだけの被害(人命にも、経済的にもどちらもです)を引き起こすか具体的に想像したくはありませんが、とんでもないことになるだろう、と想像はできますよね。
そうならないように、節電を呼びかけたり、発電所の整備を先送りにして稼働させたり、原発を再稼働させたりと様々な手段を用いて「最悪の事態」を回避しようとしているわけです。「停電しなかったじゃないか」というのは、電力が足りたことの証明ではなく、インフラを担う多くの方々の努力が実り、「なんとか足らせることができた」ことの証明ではないでしょうか。



◆まとめにならないまとめ

以上、大変長くなりましたが、改めて本エントリの内容を要約してみます。

  • 北海道の電力需給は冬にピークがあって、暖房など生活に直結するものが多いので、停電などが起こるのはなんとしても避けたい。
  • 泊原発が止まっている今、冬の需給は厳しいとされている。一方で足りるという意見もあるけど、どっちも見てみると、やっぱり足りないんじゃないかと思える。
  • 「足りる」という意見の中には、根拠のないものや陰謀論が含まれているものもあって他人事のように感じた。


「足りる」論、「足りない」論のどちらも読んでみた結果、僕は「やはり冬の電力需給は厳しいのではないだろうか」「このままでは電力が足りないのではないか」と考えるに至りました
もちろん、僕は「原発を即時再稼動すべき」と主張しているわけではありません。この「足りない」状況にあって、現実的にとり得る手段のひとつに泊原発の再稼動があるなら、それを選択する必要もあるだろう、と考えているのです。実際に再稼動されるにあたっては、法に定められた安全基準を満たし、慎重に慎重を重ねて行われるべきでしょう。


中長期的にみて、原発への依存度を低くし、最終的にゼロにするという目標を掲げるのと同時に、短期的には原発の再稼動を含めた電力需給策を講じ、日々の生活に対応してゆくという方針が必要なのではないでしょうか。


どんな手段が取られるにせよ、電力不足と冬の寒さによって死者が出ないよう、できれば体調を崩される方が出ないよう、祈っています。

◆北海道の今冬の電力供給対策について、ほくでんから資料が発表されました(9月6日追記)

本エントリで引用したほくでん資料は7月31日付けのものでした。9月5日、今夏の節電状況および冬に備えた対策を踏まえたうえでの対策状況資料が発表されました。
今冬の電力需給対策の進捗状況について−北海道電力プレスリリース:2012年9月5日

pdf資料はこちら→今夏の電力需給状況 および今冬の電力需給対策の進捗状況について(pdf)から閲覧できます。
こちらは転載許可を取っていないので、要旨のみ引用します。

  • 緊急設置電源の追加導入、自家発電の余剰分の購入に加え、知内火力発電所の燃料輸送制約の緩和、苫小牧市の公害防止協定による制約の対応を行った。
  • この結果、供給電力(kW)で約8.4万kW、供給電力量(kWh)で約2.4億kWhの増分の目処がついた。

この発表に対し、北海道新聞では

冬の電力なお1・4%不足 北電、供給上積みでも
北海道電力は5日、追加供給対策を実施した上での今冬(12〜3月)の電力需給見通しを発表し、電力の安定供給のため最低必要とされる供給予備率3%(18万キロワット)を確保するには、最大8万キロワット(1・4%)不足するとの見通しを示した。7月31日の発表では不足分が17万キロワット(2・9%)だったのと比べて改善したものの、電力不足の解消に至らなかった。<北海道新聞9月6日朝刊掲載>
冬の電力なお1・4%不足 北電、供給上積みでも−どうしんWeb[北海道新聞]より引用

と取り上げており、不足分が改善したものの電力不足の解消には至らなかったと、以前厳しい状況にあることを伝えています。




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