読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

紺色のひと

思考整理とか表現とか環境について、自分のために考える。サイドバー「このブログについて」をご参照ください

猫のょぅじょがょぅじょに来た日

生活

妻と相談のうえ、ネコを養女に迎えた。僕にとっては初めてのネコ飼育となる。



ただ、これまでの僕の生活の中で、ネコが一緒だったことが一度もなかったという訳ではない。大学の寮生活時代、僕と友人連中は寮に出入りしていた茶トラと一緒に一年ほどを過ごした。彼の名前はネコミチ、僕が後輩の名にちなんで名づけたのだった。同時期に友人のひとりが拾った姉弟ネコ、ムスコ(♀)とファンタ(♂)と併せ、日毎にふてぶてしく太ってゆく彼を眺めていた。
ムスコとファンタは、卒業までを拾った友人と過ごし、その後彼の実家で生活している。彼に電話をしたら、「実家にネコ部屋が増えていた」と話していた。可愛がられているらしい。灰トラと黒トラの凛々しい若ネコだった。


ネコミチは、僕たちが卒業するまで寮内を出たり入ったりして暮らしていた。束縛するでなし、お互い好きにやっていた関係だったと思う。卒業後、後輩の誰かが餌をやっていたそうだけれど、寮生の命綱たる食堂への侵入というご法度をやらかし、出入り禁止を食らったと聞く。僕たちの餌付けにも原因の一端がある。
今、彼が元気でやっているかは知らない。多分大丈夫だ。




昔話はこのへんにしよう。
ともかく、ふとしたきっかけから話が進み、僕たちはネコと暮らすことにした。市の飼い主探し情報やwebの掲示板などを調べているうちに、ネコカフェの場で里親探し活動をしているツキネコカフェさんで里親を募集していた一匹のネコの写真に目が留まった。
彼女はナナと呼ばれていた。去年の5月生まれ、拾い主さんの家の前に2匹の姉妹と一緒に捨てられていたという。共働きで日中家を空けている僕たちには、子猫よりも若いネコのほうがいいよね、と話していたところだった。ナナの写真を見た妻の瞳孔がきゅっと収縮した…かはわからないが、とても気に入った様子だったので、僕たちは土曜の朝、カフェに電話をして、さっそくお見合いを決行した。
ネコの飼育経験がないに等しい僕には、適度な距離というのがまだ分からない。あまり臆病なのよりは、こっちに構ってくれるくらいの甘えた性格がいいな、と思っていた。ナナはその通りのネコだった。僕たちはその場で引き取りの意思を伝え、拾い主さんに連絡を取ってもらって、翌日また来ることを告げて店を後にした。



そして、今日。

お店で拾い主さんと会い、よろしくお願いしますとお互いに挨拶を交わして、二階の飼育スペースでケージに入れられ、



地下鉄に揺られて、彼女は家にやってきた。数日前の立春の陽気が嘘のような、冷たい細雪の降る午後だった。



ネコを飼っている妻の実家から借りてきたハウツー本を参考に、距離をとってケージを開ける。さっそく探検を開始。



模様はキジトラ。尻尾の真ん中から先が灰色なので、灰トラと雉トラが祖先にいるのかしら、と思ったり。



窓の外を覗いてみたり。



しばらく好きにさせておくのがよい、と書いてあったのだが、辺りを見回しながらあんまり鳴くので妻が呼んでみると、すぐに近寄ってきて甘える。拾い主さんのお家で数ヶ月生活していたとのこと、随分かわいがってもらったようだ。同居のネコともうまくやっていたとのこと。



室内飼いである以上、警戒心が薄いのはそこまで危機的な性格ではないと思うのだけれど、視線が合うとすぐにこちらに駆け寄って来るので、写真を撮るのが難しい。




先達のぬいぐるみ、ウサ公と。腹はシマウマ的な白さ。妻のお気に入りの緑色のソファには、馴れるまでトルコで仕入れた布を被せておくことに。



飼い主ふたりの定位置が各々のパソコン前であるため、必然的に彼女もパソコン前の太ももの上にやって来る。ムスコ(♀)の若かりし頃の姿を見つめてみたり、




マウスカーソルの矢印を見つめてみたり。
目つきが悪いとの評が一部で聞かれたが、確かにちょっと三白眼気味かな。瞳の横の隈取模様がはっきりしているので、それで強調されているのかも。




あまり彼女、彼女と呼ぶのもなんなので、名前を紹介する。彼女の名は、プッセ

プッセとは、僕の祖母や母が飼っていたネコの名だったそうだ。祖母の兄が詩集を持っていた、ドイツの詩人カール・ブッセから来ているという。なぜブッセ(Busse)でなくプッセ(poussez)なのかはわからない。訳の差なのか、聞き違いなのか。ともかくこのネコの話をすると、祖母は必ず「山のあなた」を諳んじる。


山のあなた』Über den Bergen


山のあなたの空遠く
「幸(さいはひ)」住むと人のいふ。
噫(ああ)、われひとと尋(と)めゆきて、
涙さしぐみ、かへりきぬ。
山のあなたになほ遠く
「幸」住むと人のいふ。


カール・ブッセ 上田敏訳『海潮音』より 参考引用

僕も妻も、この詩がとても好きだ。祖母が口ずさむ詩の文句に、自分たちの生活を重ねて聞いていた。
僕たちふたりの生活は、一昨年の春に始まった。まだ始まったばかりと言ってよいだろう。
改めて仰々しく、山の彼方に「ほんたうのさいはひ」を探しにゆこうと思ってはいない。けれど、幸せな生活を一歩一歩築いてゆこうという気持ちは僕も妻も強く持っている。僕たちの生活の道筋、遠くの山に向かう道に、彼女プッセを交えて、僕たちは進むことにする。



プッセ、これから、よろしく。


  • メモ1:頭胴長40cm、全長(含尾)62cm、体重約2.4kg。2010年5月生まれ、2011年2月6日現在で8ヶ月齢。
  • メモ2:爪とぎ用段ボールを置いておいたところそれを使用、トイレも場所を教えたら最初からそこで用を足した。翌朝糞も確認。拾い主さんのしつけに感謝。

広告