紺色のひと

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美唄・宮島沼に天然記念物マガンの渡りを見にゆく

5月の連休に、美唄市にあるラムサール条約登録湿地・宮島沼へ、渡り途中のマガンを見に行って来ました。
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マガンについて

マガン(Anser albifrons)は大型になるカモの仲間で、月と雁のモチーフとなったり、大造じいさんと知恵比べをしたり、実際に見たことがなくとも名前を聞き及んでいる方が多い鳥と思います。ハヤブサなんかもそうかも知れませんね。
マガンはその生活史において長距離の渡りを行うことが知られています。日本国内で見られるマガンは、夏季にシベリアで繁殖し、寒くなると南下して宮城県の伊豆沼などに冬鳥として飛来する渡りを行います。北海道では、その渡りの途中に経由する中継地として、美唄市宮島沼や苫小牧市ウトナイ湖などに飛来する個体を見ることができます。宮島沼では、シベリアに向かう途中の5月上旬と、シベリアから南下する途中の9月下旬が観察シーズンです。
<ラムサール条約登録湿地>宮島沼(北海道美唄市)のホームページへようこそ

ということで、妻と連れ立って美唄に行って来ました。狙うはマガンが湖に集まってくる日暮れ時の「ねぐら入り」、朝いっせいに飛び立つ「ねぐら発ち」です。


ねぐら入りとねぐら発ちの観察

市内で遅い昼食を済ませて、午後4時を過ぎた頃に市郊外の宮島沼へと向かいました。まだ水が張られていないあちこちの田んぼでマガンが地面をつついています。
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夕暮れが始まりつつある頃、宮島沼には撮影ポイントを求めてカメラマンの群れが押し寄せてきていました。僕たちもおばちゃんカメラマンに挨拶をして、群れに入れてもらいます。
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「来たぞっ!」 午後17時35分、最初の群れが飛んで来ました。きれいなV型の編隊を組んでいます。日中過ごした餌場から、群れで夜を過ごす場所に移動することを「ねぐら入り」といいます。
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東からも西からも、どんどん飛んで来ます。
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少しずつ日が傾いて、西の空がオレンジ色になってきました。逆光覚悟でシャッターを切りまくる僕と妻。
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だんだん湖面が埋まってゆくのがわかります。
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マガンは飛ぶときに変な声を出すので、どちらの方向から来るかすぐにわかります。カタカナでどう表記すればいいかと悩んでいましたが、「キャハハンキャハハン」というバブルOLの笑い声(偏見)みたいな例を見つけたのでそれに倣います。
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気づけば湖面がすごい色に。
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「月と雁」ならぬ「夕日と雁」みたいな写真を撮ろうと思ってあれこれと撮ります。
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穏やかな田園風景の中で、ここだけが騒がしい。
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東の空は少しずつ色が濃くなって、深い紺色にシルエットが映ります。
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タイトルは「最後の大隊(Letzte Bataillon)」。
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さっきまで静かだった湖面が、今は広い広い井戸端となって、マガンたちの会合場所となっています。宮島沼のブログ「今日の宮島沼 - 宮島沼日記」によると、この日のねぐら入り個体数は4万5千羽。今年のピーク時は僕たちが行った前々日だったようで、なんと7万4千羽!


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なんとか渡りのピーク終盤に立ち会えたようです。「すごかったね」と言い合いながら、市内の温泉へ。
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よい気分になったところで、美唄名物、モツがおいしい美唄焼き鳥をがつっと食べて(僕は運転手なので飲めませんでしたが)、再び宮島沼へ。
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狭い車のシートを倒し、車中泊を試みます。ホンダ・Zにふたりが眠るのはかなり無理があって、なかなか寝付けませんでした。
午前3時、アラームでなんとか体を起こし、積んで来た水とコンロでお湯を沸かしてコーンスープを。妻は頭も体も動かないようで、もにゃもにゃ言いながらスープをふうふう冷ましています。ともかく、機材を持って、再び昨日陣取った位置へ。既に十数人のカメラマンさんが準備を始めています。



未だ静かな湖面。ねぐら入りのときはあれだけ騒がしかったマガンたちも大人しく眠っているようです。
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騒がしくないとはいえ、起きているやつは起きていますね。
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あっ、ひとつの群れが飛び立ちました。
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次の瞬間、どどどおっ、と音がして、大気が揺れた気がしました。すごい、すごい量のマガンが、いっせいにテイクオフ。
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呆けている間に、どんどんと朝焼けの中に吸い込まれてゆくマガンたち。このままシベリアに向かう群れもいるのでしょう、気をつけて!
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さっきまであんなに芋を洗うようだった湖面が淋しい。
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こんな感じで、僕たちの初めてのマガン観察は終わりました。
僕自身、野鳥の観察に多大な興味があるわけではないのですが、マガンというメジャー種であること、札幌からのアクセスが容易であること、時期を外さなければほぼ確実に見られること、なにより鳥を含めた風景そのものが非常にダイナミックであることから、観察対象としてはある意味初心者向けなのかな、と感じました。鳥見の経験がない妻でも大変面白く見られたとのこと、広くお勧めしたいです。



おまけ 美唄のみどころ

アルテピアッツァ美唄

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美唄出身の美術家、安田侃の作品が展示されている野外彫刻公園です。廃校となった小学校を利用しており、作品そのものと併せて公園の雰囲気が素敵です。
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Webサイト:ARTE PIAZZA BIBAI アルテピアッツァ美唄 -安田侃の彫刻公園-

美唄やきとり

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美唄の名物と言えば「焼き鳥」。最大の特徴は、レバー、ハツ、砂肝、内卵や皮などの鶏のさまざまな部位を、1本竹串に刺して焼く「モツ串」にあります。

代表格のモツ串や精肉など、塩味がしっかり効いた焼き鳥です。僕と妻の大好物であり、ふたりで飲みに行くと4回に1回くらいが美唄やきとり屋さんになります。尚、現地ではひと串80〜100円程度。
こちらはモツ串をそばに落として食べる食べ方。
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Webサイト:http://www.city.bibai.hokkaido.jp/2006/10/345/

沼東小学校跡地

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最後に廃墟をひとつ。
美唄市は昔炭鉱町として知られており、その中心部だった我路(がろ)地区をはじめとする炭鉱町の最盛期には2万人が暮らしていたと言われています*1
そこにあったのが沼東(しょうとう)小学校。コンクリート製の円形校舎であり、ふたつの八角形を廊下で繋いだ、メガネのような珍しい形状をしていたといいます。昭和49年に廃校となって以来、現在は林道の奥に校舎の片側のみがそびえています。廃墟マニアの中では有名とのことですが、廃墟内への立入自体があまり薦められた行為ではないため、位置等については伏せさせて頂きます。


ニセアカシア林の中にあらわれたる八角形。
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5月上旬で雪が残っていたため、校舎の周囲は雪融け水が溜まって水深が1m以上となっていました。
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これだけだとちょっと淋しいので、以前探検した際の写真を紹介します。
円形校舎の中央部に螺旋階段があり、中央部には荷物用なのか小さなエレベータが。
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廃墟・廃屋は秘密基地やエロ本貯蔵庫になるのはどこも一緒だとは思いますが……どうやらかなり最近のラクガキと思えるものを発見しました!
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こっちは古いなー。ど、同級生?
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ところでこの沼東小学校、「まんがサイエンス」「るくるく」やエヴァンゲリオン使徒のデザイン等で知られる漫画家、あさりよしとお御大の出身校として知られています。氏の初期作品「宇宙家族カールビンソン」にはこの小学校や我路の町がそのままモデルとなっています。

宇宙家族カールビンソン (1) (講談社漫画文庫)

宇宙家族カールビンソン (1) (講談社漫画文庫)

Webサイト:http://www.takaraism.com/garo2009/

*1:現在は美唄市全体で2万6千人であることから、炭鉱の規模の巨大さが窺えます