紺色のひと

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「モテキ」の感想を書くよ。

恋人が表紙買いしてきた久保ミツロウ「モテキ」を読んだら、思いのほかがっつりと抉られてしまった。30近い男の心情を描いたものに共感するなんて年取ったなあとか、いちいち落ち込み方がリアルだなぁとか、そういうことを考えて紛らわせようとしたのだけれど、駄目だった。二日に一回くらいのペースでページを開いては床に突っ伏している。


藤本幸世は東京で暮らす29歳の派遣社員。彼の元に、ある日突然女性たち−数少ない、過去に遊びに行った女性や女友達など−から連絡が押し寄せた。ひとは誰も、一生に何度かモテ期が訪れるという。ついにおれにもそれが到来したのだ――というところから物語は始まる。
一巻でのヒロインは、前の派遣先で一緒だった土井さん、友人つながりで知り合った女友達いつかちゃん、そして根暗だった二十歳の頃に因縁があった夏樹さん、の3人。夏フェス女、カメラ女子、女子ブロガー。ヒロインも壮絶である。彼女らとライブに行ったり旅行に行ったり過去を振り返ったり飲みに行ったりしながら進んでゆく。

で、この藤本の駄目男っぷりに引っ張られて話が展開してくのだけれど、僕は恐ろしいことに気づいた。僕は彼のどこが駄目なのか、具体的に指摘することができない。ので、他のレビューを参照してみた。

うわあモテ期が来たよ! と浮かれておきながら、「俺はこのモテ期に誰かを好きになることができるだろうか」とか自問しちゃってんの。要するに、モテる=誰かに好かれる → 好かれたら好きになれる気がする、ということですよねー
(中略)
自分から真面目に女の子を好きになれるほど他人に興味もないくせに、女友達が「早く次の恋をしたい」と言うと「俺のことはどう思ってんの?」とかショックを受けるし、憧れてる女の子にホテルに連れ込まれそうになっても、「俺のことどう思ってんの?」と抵抗したりするし。自分から誰かを好きになって思いを伝えるような度量もないくせに、女の子からの言葉をほしがってばっかり、しかも何度も同じようなことを繰り返す。
モテキ(1)/久保ミツロウ - 悪態の小部屋

な、なるほどー。
受身というよりは、判断をことごとく女性側に委ねていて、その割に積極的なアプローチがないと不安になって、結局我慢できなくなって行動に移す(足を止めたり言葉にしたりする)ことで問題の一気解決を試みるのだけれど、女性側に目を向けていないせいで根本的なことに気づいていなくて、終了。
僕にとって、主人公のこの結局自分にしか興味がないところの描き方がすごくリアルに感じられる。おまけに共感してしまうものだから同時に自己嫌悪が発生する。破壊力大。上手く言えないのだけれど、常に自分の選択を後悔しているようなところのある僕には、一歩間違ったら藤本のようになっていた感が強調されて、今の自分の現状に感謝するより先にその「紙一重感」にぐったりしてしまう。
もうひとつ、主人公がもやもやとして、なんとかしなきゃ、えいやっと行動に移す、その気分の高まり方がとても上手に描かれている。どきどき感でいうと中学生レベル。いろいろ自分の感情に説明づけようとしてはいるのだけれど、それが胸からせり上がって喉を通って、口から吐き出される、ああ言っちゃった、どう思われるだろう・・・・・・って雰囲気づくりがうまいと言えばいいのか、ともかくそのへんに僕はやられた。
それにですよ。非常に個人的な理由で盛り上がって申し訳ないのだけれど、上記のテンションが最大に高まる舞台が、なんと山形県つろが市なのです!!!!聖地巡礼を行わずして既に知っている場所!駅!加茂水族館!湯田川温泉!ぎゃああ妙に現実性が増幅される抉られる!いつかちゃんかわいいよいつかちゃん!うわああああ!


というわけです。読むべき。特に庄内に縁のある男どもは読むべき。

モテキ (1) (イブニングKC)

モテキ (1) (イブニングKC)