別冊紺色のひと 特集:川ボーイ A to Z
山に入らないアウトドアウェアの若者や、森に棲めない森ガールが街を闊歩する今日この頃、皆さんがいかがお過ごしか皆目見当もつきません。森ガールの知られざる生態に迫った前回のエントリ(われは森の子、森ボーイ - 紺色のひと)に続き、今日は東北地方のとある川で確認された川ボーイについて、僕の知っていることを書こうと思う。
川ボーイと呼ばれる文化圏に属する男子をご存知だろうか。森ガールが「森にいそうな文科系女子のライフスタイル」と定義されているように、川ボーイにも定義らしきものがあるという。
川ボーイとは
川ボーイとはひと言で言うと、イケイケのサーファーやダイバーなどとは一線を画す淡水系男子のライフスタイル。その属性はたとえば以下のような感じです。
見てもらったほうが早いので、いくつか写真を交えて解説していこう。
川ボーイの生態
- 川ボーイ(写真中央)は、本州以南の河川中〜上流部に生息する淡水系男子である。
- 川に入ると水を得た魚のごとくはしゃぎまわり、
- 時にはガンジスの亡骸の如く流れ下る。
- たまに陸に上がり、やはり魚を捕って食べる。
- これまでご覧頂いたように、基本装備はウェットスーツおよび鮎足袋である。こちらはかなり重装備の個体で、観察時の識別個体名は「赤川の黒いサンショウウオ」。このウェットスーツ「濡衣」には美脚効果もあるというスグレモノ。
- しかし変温動物のため、北海道での生息はまれと言われている。これは雪の中で餌を探している非常に珍しい行動である。
- 誰でも川ボーイになれるわけではなく、非常に厳しい川篭りの修行(写真上)が必要とされており、時折気が向くと弟子を取って若者に生活の知恵を授けるという(写真下)。
川ボーイのおすすめ書籍
川ボーイは次のような書籍を読む。舞台が川ならいいという訳ではなく、自身の感受性を強く意識するものを特に好む。逆に遠藤周作の深い河などは深くて怖いのでそんなに好きではない。
- 作者: 大石まさる
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2008/10/29
- メディア: コミック
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- 作者: 野田知佑
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1998/06
- メディア: 文庫
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- 作者: 川端裕人
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/07
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まとめ
以上、知れば知るほど謎の多い川ボーイ。残念ながらオシャレさの欠片も感じられない。黒一色だし、ハチやアブが寄ってきて大変らしいし。森ガールとは比べようもなく、なんかもう対抗意識とかも尽き果てた。
もうひと月もすれば雪も融け始め、川原には子どもたちの遊ぶ声が響くだろう。直接聞くことができなくとも、僕はそのことをとても嬉しく思う。
川ボーイの少年版、いや、もっと純粋で力強い存在として、川ガキという存在がある。全国の水辺をまわって撮影活動をされている写真家の村山嘉昭さんは、この川ガキを絶滅危惧種ととらえ、その生態についてこう語っている。
元気な川には、たくさんの生きものに交じって"川ガキ"という生きものが生活しています。
水辺に生息するこの生きものは、魚をはじめとする水生生物などが大好きで、岸辺の岩や橋から川へ飛び込んだり、仲間と競い合って泳ぐなど、その生態は様々です。
(中略)
"川ガキ"とは、セミの鳴き声が響きはじめると水辺に現れる子どもたちのこと。
青い空を映し流れる川に身体をおもいっきり浸し、鮎、エビ、ヤマメを追いかけた夏。
川面いっぱいに響く笑い声。
腕よりも太いコイを捕まえ、胸が高まった懐かしい日々は、いまでもニッポンの水辺に続く光景として存在しているのです。
kawagaki.net
村山さんのブログ:river-stones.com
いつか彼ら川ガキと一緒に、橋の上から深い蒼に飛び込むことが僕の夢のひとつである。それまで、心の中の川の流れを絶やさず、脈々と流れ続けてゆければいい。
あとがきにかえて
思いがけず自分の学生時代を振り返るエントリになってしまった。友人たちが撮ってくれた写真を漁る作業は楽しくもどこか淋しい。いつか、いつかと言ってばかりではなく、自分の現実を踏みしめながら、望むべき川原で過ごせるいつかを近い将来に変えてゆけるよう、僕は流れをさかのぼってゆこうと思う。妄想する未来を現実にするのが、僕の遡上行動なのだ。流れに逆らって、逆らって、いつも頭の中にある美しい川原にたどり着けますように。
*1:裏がフェルトで濡れた石の上でも滑らない魔法の靴