紺色のひと

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湧き出ずるもの

上司と、今僕が抱えている案件について打合せをした。いくつかやりとりをして、僕が出した資料を見ながら、上司はゆっくり話し始めた。

「あのな」
「俺らがやってるのは肉体労働じゃなくて、一応頭脳労働なんだから」
「発想力とか、おっと思うような提案とか、気づいた問題点とか、そういうの」
「課題がないか、って聞かれて『特にないです』って言われるとガッカリっつうか」
「そこはでまかせでも何か言えるくらいでないと」
「実作業を誰でもできるレベルまで落としこむのも大事だけど、お前の段階でそれをやっちゃ駄目」


彼がなにを言わんとしているかはわかった。それは優しく言えば「もうちょっとその小手先処理どうにかならんか」という指摘で、期待して言えば「それをなんとかできればいいんだけどなぁ」という助言で、曲解して、かつ汚く言えば「お前のその性格はこの仕事に向いてない」だった。



や、わかってますよ。おれに、想像力とか発想力とか、そういうのが決定的に欠けてるなんてことはね。おれにできるのなんか既存の問題点の抽出とその処理くらいで、事象のうわっつらを撫でるくらいなもんで、提案だの発想だのアイディアだのって言葉に代表されるクリエイト力なんてこれっぽっちもありませんよ。
わかってますよ。多分誰よりも一番、おれがそのことをよくわかってますよ。この仕事の根本のところで必要とされてるのが、そういう想像力とかだってのも、痛いほどよくわかってますよ。


あのね。おれは作品を作らないんじゃないの。作れないの。ゼロから生み出すことなんてできないのよ。切ったり貼ったりとかだけなの。そこが小器用なだけなの。多分、どっかで見たようなものばっかりできるだろうよ。たとえうたを歌おうが、写真を撮ろうが、小説を書こうが、劇を演じようが。おれが、なにをしようが。
それがあんまりにも怖いのよ。だからおれが作るものは常に内向するし、外を向いても身内まで。
出てこねぇんだもんよ。湧き出るようなナントカとか、突き上げるようなショウドウとか、そんなの。


今日のは効いた。