紺色のひと

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「深爪のひとを数えてる」会、もしくは第X回逆上がりオフについてのごく個人的な考察

北の都、札幌に縁も所縁もある3人、深爪さん(id:deepcut)、さゆりさん(id:Fredrika)そして僕で飲み会をした。インターネッツがここまで身近になった昨今、この面子で集まることをオフ会と称するのには若干ためらいがあるのだけれど、便宜上オフ会ということにする。「紺色の羊の爪」会、または「深爪のひとを数えてる」会である。
僕は、深爪さんとの遭遇を心待ちにしていた。テキストサイト時代からの読者としては、噂の逆上がりオフになんとしてでも参加したい、あわよくば廻りたいと思っていたからである。これまで海峡や時代に阻まれ、断念のうえ充電を余儀なくされた、この鬱屈した縦回転をついに発散するときが来たのである。
一次会からさんざんぱら飲み散らかした僕は、店を出た後すぐ、池のある公園に向かった。店を選ぶ際の最優先条件は「近くに鉄棒がある」ことだった。記憶を辿り、交番の横を抜けて児童会館の前の遊具広場に駆け寄った僕の視界に、鉄棒は入らなかった。どこかへ消えてしまった。
失意と腹の具合に襲われた僕は、さゆりさんの「なんか面白い話して」という無茶振りをなんとかかわしつつ(かつ深爪さんの同情を受けつつ)歩いた。話は逸れるが、インターネッツの中のひとに向け、面白い話をするのは僕にとって非常にしばしば困難である。僕にとって「面白い話」とは、自分の痛々しい過去を掘り返し、それを嘲笑してもらうことであるのだが、大抵のネタはここに書いているのである。なにを言っても「もうそれ読んだ」と言われる危険性を孕んでいるのだ。ともかく、僕たちは北へ向かった。目指すは大通公園である。夏にどこぞの学生が野宿をしていたくじら山の梺、確か鉄棒があったはず――その記憶だけが頼りであった。果たしてそこにそれは在った。僕はそれに駆け寄り、叫んだ。「在ったど」と一言叫んだ。酔っていたのである。
まずは主宰が廻った。いろいろと勿体をつけたが、彼は廻った。どこまでも力強く、確かな逆上がりがそこには在った。日比谷公園で、新宿御苑で、秋田で、そして札幌で。日本各地で鍛えたその逆上がりは、ひとりの男の孤独と温もりに溢れている、と僕は感じた。しかし空中逆上がりは失敗した。
続いて紅一点が廻った。彼女は雪上に尻餅をついた。
僕についてはとくに語るべきこともないが、敢えて言葉を残すなら「実は練習した」であろう。
最後に軽く酒を飲み、僕たちは別れた。
ひとつひとつ書き残すまでもない、と感じたことと、手帖にメモしておきたいと思ったこと。それが少しずつ変化している。僕たちは楽しい時間を過ごした。持ち歩いている手帖に残ったのは、AV女優の名前と、誰かのスリーサイズだけだ。たったの2行、それでも僕はこの夜のことを長く覚えていたいし、きっと思い出すだろう。話をして、あるいは読んで、大切にしていたいと思うことが重なりあっていることを感じたとき、僕はそのひとを大切だと思う。
最後に写真を少し載せる。
「思ったよりペースが遅いな」と思ったのは、多分僕に合わせてくれていたからだったと今は思う。

覚悟の時間。「カタギですか?」「刺しますよ?」

少々やっつけ仕事ですが、エンドロール代わりに逆上がりの状況を。爪が短いひとりの男の廻りっぷりをとくとご覧あれ。

「ふおぉぉぉぉぉぉぉぉおお」