紺色のひと

思考整理とか表現とか環境について、自分のために考える。サイドバー「このブログについて」をご参照ください

桃色音読野郎による恋文のすゝめ

もっと早くに、できれば学生寮時代に読み始めていればよかったと最近とみに思うのが森見登美彦氏の作品群である。登美彦氏の衝撃作「四畳半神話大系」が上梓されたのが2004年の冬、僕が寮に入る前の冬であることを考えると、これほどの巡り合わせもないとごく個人的に思うのである。氏は79年生まれということであるから、大学生であった期間は僕とさほど差がないことになり*1、臭く汚い棲み家の描写や所属していた学部も含め、好きな作家と共通点を見出してにやにやしてしまう僕にとっては、氏の文体・内容と併せ楽しみどころのひとつである(とはいえ、大きな魅力である京都描写を山形の田舎者が完全に理解できない時点で駄目だと言われてしまえばそれまでであるのだが)。
さて、登美彦氏に対する僕の個人的な感情はこの際どうでもよく、ここでは氏の作品に対する別の楽しみ方を提案したい。それは音読である。氏の作品を部屋で、できればひとりで朗読するのである。噴き出しそうになってもつばを飲み込みつつ、ひたすらにいやらしい笑いを口元に浮かべながら読むのである。するとどうであろう、登場人物の卑下た笑いが自らに乗り移ったかのように感じられ、鏡を眼前に置こうものなら自己嫌悪を通り越して浮かれ、思わず念仏踊りを踊りだしてしまうこと請け合いである。
先頃、紀伊国屋などの大型書店にて頒布が開始された「ポプラ社一般書がお贈りするWEBマガジン ポプラビーチ」6月号に氏の連作小説『恋文の技術』が掲載されているが、文体を様々に変化させる氏の筆はさながら八面六臂であり必読である。また前述した音読にも非常に適するので、【ポプラ社一般書がお贈りするWEBマガジン ポプラビーチ】を参考に入手し、部屋で魔物を召還するが如く読むことを強く勧める。
僕などは、黒髪の乙女が持ち帰ったasta*を音読し読み聞かせたところ、横になっていた乙女が突如笑い出し、挙句の果てにベッドの上で膝上までの靴下一枚になり詭弁踊りを踊り出したというが、僕は読むのに夢中であったため定かでない。ひとには向き不向きがあるもので、こういったいやらしい所業は僕に非常に向いているらしく、自己主張甚だしいことを承知で、できるものならこれをお読みの皆さんに僕がWebラジオででも音読して聞かせて差し上げたいところである、と申し上げておく。
なお、知られているのかいないのか、森見登美彦氏ははてなダイアラーid:Tomio)であり、お忙しい中近況などを届けてくれたりもするので尊敬する。万城目氏*2への並々ならぬ関心が爆苦笑を誘う。いつもありがとうございます。

四畳半神話大系 (角川文庫)

四畳半神話大系 (角川文庫)

*1:氏は大学院卒、僕は氏よりも4つ下である

*2:鹿男あをによし」の中のひと