紺色のひと

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すべてのことは

すべてのことは思うようにゆかない

実篤先生はその後に、「けれどおれは辛抱強く我慢してしっかりやってやんよ」みたいなことを続けていた。先生の言葉は昔から、まっすぐすぎて好きだった。母が若い頃に読んだという詩集に線を引いて読み返した。時折母の線と僕が引いた線が重なった。まっすぐにまっすぐにと思って、けれどそう、すべてのことは思うようにはゆかないのだ。「人生そんなもんだよ」なんて達観めいたことは絶対に言ってやるもんか、と昔から思っているけれど、「すべてのことは思うようにゆかない」だけは信じていられる。だから、誰から最低な人間だと思われようと、誰を泣かせようと、思うようにゆかないことに耐えていなければ。そして思うようにゆくことのためなら、僕の体なんて百ぺん焼かれても、


焼かれてたまるか!
だから、焼かれる前に、望みを叶えなくてはならない。

武者小路実篤詩集 (新潮文庫)

武者小路実篤詩集 (新潮文庫)

この道より他に 我を生かす道なし この道をゆく

そうまで胸を張れるかはわからないけれど、だから、何度でも言うけれど、僕はやってゆかなければならないのだ。