紺色のひと

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そんな宛名のない手紙:やまがた県に移住します

こんにちは。なんでも地球温暖化とか異常気象に結び付けて語りたがるひとに辟易する今日この頃、あなたがいかがお過ごしか皆目見当もつきません。
春から生活が一変するので、この場をお借りして報告いたします。



家族で山形に移住することにしました*1。ちなみに、ブログタイトルを変える予定はありません。




普段、「まだ都会で消耗してるの!?」という大上段の煽りを冷めた目で眺めている*2側としては、地方都市(東京ではないにしろ、いちおう東北以北最大都市である札幌)を離れ、人口がより少ない町に移り住むという行為について、このはてなダイアリーの場でお報せすることに若干のためらいがないこともないのですが、それはともかく*3







◆動機とか

「あの町が忘れられなかった」のだと思います。
とある町で学生時代を過ごした3年間、寮生活や大学での研究生活はすばらしいもので、卒業後しばらくして妻と付き合うようになった頃、「あなたの話は8割が大学で、そのうち9割が寮のことだね」と言われるくらいでした。
当時の連中は既にあの町には居ません。当時つるんでいた面子があの町に揃うことは、余程のことがない限りないでしょう。それでも、あの春のぬるい空気と西日の強さとか、海と山までの距離とか、プールサイドみたいな初夏の空気とか、真夏の頬付けした床の冷たさとか、サクラマスの死骸とか、重たく足にからまる雪とか、土地や環境に忘れがたいことがあまりに多いようです。
そして、当然自覚していることですが、僕は既に学生ではありません。ある種のお客さんだったのと、その場で生活する一員となることでは、周りの対応だって変わってきます。何度か遊びに行くたび、町に新しい建物ができたり、たまり場にしていたカラオケボックスが潰れていたり、エロ本の品揃えがやたらに良い近所の本屋さんがなくなっていたり、いろんな変化がありました。
「これは学生時代のいい思い出に引きずられているだけで、楽しかった学生の頃と、理想のステキな暮らしを混同しているんじゃないか」というごく当たり前に浮かんでくる疑問に対して、ずっと考え続けてきたつもりです。それでも、卒業後何度もあの町を再訪して、結論づけました。確かにあの頃の生活はすばらしかったけれど、僕は今、一緒に生活したあの連中がいなくても、ユルい学生の立場でなくても、あの町で、あの土地で、愛する妻と娘と一緒に暮らしたいのだ、と。
そういえばFIELD OF VIEWも歌っていましたね、「この街で君と暮らしたい」と。



◆家族のこと

妻には、結婚する前から「そのうちあっちに行きたいと思っている」というようなことを話していたり、その後の計画を夢物語以上のレベルで相談したりしていました。
今回の決定にはいくつかの切欠があるのですが、一番大きいのはやはり、妻が背中を押してくれたことだと思っています。「あなたとならどこでも生活するよ」と言ってくれるパートナーの存在は、不安の多いこの先に対しても、共になんとかしてゆけるのじゃないか、と僕に信じさせてくれます。
僕も知人が多いわけではないのですが、妻はこれから行く土地にまったく縁がないわけで、そのあたりのフォロー含め、考えるべきことは多いです。
あ、もちろん、猫のプッセも一緒に行きます。




◆仕事

僕がこれまで就いていたのは非常に専門分野の狭い技術職で、仕事内容を聞かれると説明用の定型文で答えた後、自嘲気味に「潰しが利かない」と返すことが多かったです。
副業だとか、小さな仕事にいくつか取り組んで月収いくらを目指す、みたいな方面に興味がないわけではないのですが、自分の手にあるスキルと呼べそうなものを眺めてみても、季節限定だったり、お金に繋がりにくかったり、一筋縄では行きそうにありません。当座の仕事は見つけてあるので、この機会に「おれには何ができるのか」という子供の頃から抱いていた命題に正面から向き合うことになるな、と感じています。
この場でこれまでの職場について書くことはしませんが、新卒入社して10年近く過ごしたこともあり、育てられた恩を感じています。すみませんと思うところも(特に直属のボスに対して)大いにあるのですが、自分で決めたことですし、送り出していただけることを嬉しく思っています。得たもので自分の力にできることを整理しつつ、これからに活かしたいなーとか、月並みですけれど、本当にそう。





◆すむところ

古い一軒家を借りました。
色々といいお話が重なって、古いけれど住環境と周辺環境のとてもよいおうちが見つかりました。いわゆる「田舎暮らし」はこのたびの移住の目的でも目標でもないのですが、なんだかそれに近いような環境になりそうです。
本当は「こんなにすごいぜ!」と自慢げに吹聴したい気持ちがあるのですが、ローカル面での情報の取り扱いでもっともシビアなのがこのあたりなので、おいおい必要に応じて、主に生活の場として書くことになると思います。





◆これからの「紺色のひと」について

これまで、当ブログ「紺色のひと」は、僕の身の回りのこと、生き物のこと、旅行のこと、生活のこと、食べ物のことなんかを中心に書いてきました。暮らす場所が変わっても、基本的にこのスタンスは変えないでいきたいと思っています。
地域性が強い話題になればなるほど、書き手である僕の身の回りの情報のコントロールが難しくなります。「紺色のひと」を書くアサイと、山形のあの町のあのあたりに住んでいるあいつが同一視されることで、書く内容によっては、メリット・デメリットがより大きくなることが予測されます*4
なので、そのあたりの出し方――例えば家のまわりのことを書くかどうかだとか、写真の取扱いだとか――については、移住したからと言ってあまり浮かれず、これまで通り、ある程度慎重になろうと思います。色々試してみてから、webでの僕のスタンスを考えてみます。
今のところ、ブログを生活の糧にしようと思っているわけでもないし、移住を機に実名でやろうと思っているわけでもないのですが、ある日ここに広告が入ったら「ああ生活が苦しくなったのかな」とでも思ってください。あるいはまったく別に実名でのweb活動が始まって、こちらと切り離した状態で進んでゆくのかもしれません。
暖かく見守っていただければ嬉しいです。





◆さいごに

正直なところ、不安なことは多いのです。東北の夏を経験したことのない妻がバテて体を壊さないかとか、水や気候が合わないんじゃないかとか。ただ、そういうのって、暮らしてみないとわからないことです。わからないこと、不安なことをやらない理由にしていたら、多分あっという間におじいさんになってしまうだろうし、僕はそれがとても嫌だったのです。
そりゃ全てがうまくいくに越したことはありませんが、やってみてダメならまた出戻りやらを考えればいいし、僕と妻ならそのへんのリカバーはし合えるんじゃないか、というようなことを話しました。だからといって勢いで行き当たりばったりで移住するほど僕は若くないし、妻も娘もいるし……と考えたり行動したりした結果が現在なわけです。


決意するにあたって、背中を押してくれた妻にはずっと頭が上がらない……というような言い方をするとあのひとは怒るので、この決意と行動が僕たちにとって好いものになるよう、これから頑張ってゆきたいと強く思っているのです。
年老いるまでの具体的なゆくすえを描くことはまだできていませんが、うまくいってもいかなくても、なんとか家族で乗り越えてゆきたいな、ゆけるのじゃないかな、と思っています。



ついしん

定義上、今回の僕のようなのは「Iターン」に該当するみたいですねー……、いや「Iってターンじゃないよね」とかそういう話はわかるんですけど、それは置いておいて、生まれ故郷から一度山形に行って北海道に戻ってもう一回こっちだから、むしろNターンと呼ぶべきじゃないかとか、……すみません、非常にどうでもいいですね。

Iターン現象(アイターンげんしょう)とは、人口還流現象のひとつ。出身地とは別の地方に移り住む、特に都市部から田舎に移り住むことを指す。
Iターン現象 - Wikipediaより

_人人人人人人人人人_
>  突然のNターン  <
>   山 山    <
>   |\↑    <
>   北 北    < 
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

_人人人人人人人人人人人人人_
>  FIELD OF VIEWの突然  <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄


では、また。

*1:「移住」という言葉はあまり使いたくないのですが、引越しとか転居というほど気軽な気持ちではなかったこと、自治体などでは移住という語がよく使われていることなどからここではこう表記しています。

*2:はてなブックマーク:イケダハヤトは高知県に移住します。ブログタイトルを変えました→ : まだ東京で消耗してるの?はてなブックマーク - 高知に移住したわけですが、マジで生活が幸せすぎて困惑しています : まだ東京で消耗してるの?など

*3:そういえばこんな記事:Iターンなんか絶対やめておけもありましたが、僕もここでいう「影響を受けたような、意識高い系(笑)の若者」になるのかなとか、そんなことを考えたりもしました。あまり気にしてません。

*4:移住のタイミングとか年齢とかどこから来たかとか、既に現段階の情報で個人の特定は危うくはあるのですが、それは今まで明かしていることなので、ある意味仕方がないようにも思います